Vol.6 Special Interview

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中国深圳ディスプレイ協会×CC-Link協会

深圳FPD産業底上げのカギを握る自動化技術
急成長する中小メーカーが生産管理の課題に直面

中国のフラットパネルディスプレイ(FPD)産業を牽引する重要な地域の一つとして知られる深圳。同地域を中心にFPD関連企業を取りまとめる深圳ディスプレイ協会の秘書長偰正才氏に中国FPD業界の最新動向などについて聞いた。聞き手は、産業用オープンネットワークCC-Link/CC-Link IEの普及を推進するCC-Link協会事務局長の中村直美氏、そして同協会技術部長の大谷治之氏である。

中村氏深圳ディスプレイ協会の役割について教えてください。 偰氏2005年に設立された深圳ディスプレイ協会には、現在約750社のFPD関連メーカーが加盟しています。深圳を含む華南地域だけでなく、中国の他地域や海外のメーカーもメンバーに加わっており、業界の統一的な窓口として活動しています。深圳周辺は中小規模のFPDメーカーが多いのが特徴です。業界の活力を高めるために、彼らを支援するのも私達の役割です。例えば、中小メーカーがサプライチェーンを築く手助けをしたり、大手メーカーに対抗できるように、生産性や品質を高める技術を彼らに紹介したりすることです。
実は、生産性や品質の向上を図るうえで重要な技術の一つが自動化です。もちろんCC-Link/CC-Link IEのことも知っています。Foxconnのような大手メーカーで多く採用されていますね。
大谷氏高いパフォーマンスを発揮するCC-Link/CC-Link IEは、大規模メーカー向けの産業用ネットワークと思われがちですが、その限りではありません。生産性や品質の向上は、企業規模に関係なく製造業全体に共通する課題です。実際にCC-Link/CC-Link IEを導入している中小規模のメーカーは少なくありません。大きな導入効果が得られた事例も数多くあります。 偰氏深圳の中小メーカーはこれまでも、生産性や品質に無関心だったわけではありません。より高い生産性や品質を実現したくても、その方法を知らなかったというのが現実です。生産性や品質を高める技術を、業界は必要としています。 大谷氏EthernetをベースにしたCC-Link IEは、中国最大手のFPDメーカー、BOE Technology Group様をはじめ、アジア地域で幅広い導入実績があります。そのため中国にもCC-Link IEを使ったソリューションを提供するパートナーが中国にも数多くあります。CC-Link/CC-Link IEを採り入れた液晶ディスプレイの生産ラインをすぐに立ち上げることができるでしょう。汎用の機器で構築できるので、ライン増設の要求にも素早く対応ができます。こうした手軽さは、中小メーカーに受け入れてもらえるのではないかと思っております。 偰氏中小メーカーはどこも、大手へ成長することを目指しています。しかしいくら大手に急成長したとしても、仕事のやり方が中小の頃のままでは、いずれ立ちゆかなくなります。成長に合わせてものづくりの仕組みも迅速に変えながら、競争力を高めていかねばなりません。 中村氏CC-Link/CC-Link IEは、日本はもちろんアジア全体でも、産業用オープンネットワークでNo.1のシェアを維持しています。その理由は、構築の手軽さが評価されている点にあると考えております。特にFPDの生産現場でCC-Link IEの存在は抜きん出ています。実はCC-Link IEはもともと、FPDメーカーの生産現場を想定して開発したものです。FPDの生産に使うガラス基板の大型化が進む中で、現場で取扱うべきデータ量が飛躍的に増大しています。これに伴って、その大容量のデータ転送に耐えうる広帯域のネットワークが必要になりました。この要求に応えることを前提に開発されたのがCC-Link IEなのです。FPD業界に特に採用事例が多いのはそのためです。

「自動化の目的は、人件費抑制ではなく平準化」

偰氏深圳のメーカーは、急激な成長に生産管理が追いついていないのが現状です。このため、売り上げは伸びている割に、なかなか利益が増えないという企業は少なくありません。生産効率を上げるためにデータを活用しようとするメーカーも増えている一方で、そもそもデータを取ってさえもいない企業もあります。この現状を変えていかなくてはなりません。
もちろん早い段階で生産管理の重要性を認識したFoxconnのような企業もあります。こうした企業がモデルとなり、同様のシステムが今後4年〜5年かけて中小企業にも広まり、深圳FPD業界全体において、自動化による底上げが進むことを期待しています。
大谷氏自動化は、経営に直結する課題でもあります。人件費が上がっても業界で勝ち残るには自動化しかありません。韓国のFPD業界がグローバルで成功したのは、CC-Link/CC-Link IEのような最新技術で自動化し、生産性や品質の向上に努めてきたからとも言えます。
また一方で、人件費の抑制は、自動化の役割の一つにすぎません。自動化は、単に作業する人を機械に置き換えて安くするという単純な話ではないのです。自動化の本当の目的は、日々大きく変動する生産を平準化することです。平準化により波のある生産を抑えることで、過剰な設備や在庫を持つ必要がなくなります。
偰氏自動化によって生産を平準化することの重要性や、品質を安定させるメリットも、メーカーに啓蒙していきたいですね。

「日本生まれの技術だから品質への信頼が高い」

中村氏CC-Link/CC-Link IEは、品質へのこだわりが強い日本で生まれた技術だという点にも注目していただきたいと思っています。例えばCC-Link/CC-Link IEは、すべての製品に厳密なテストを課しています。ネットワーク選びに最も重要なのは相互接続性です。規格対応をうたっている製品なのに、使える製品と使えない製品が混在しているようでは、ユーザーは困ってしまいます。規格認定に厳しいテストが課されるCC-Link/CC-Link IEは、製品を提供するベンダーにとってはハードルが高いかもしれませんが、ユーザーに大きな利点を提供します。 偰氏深圳のメーカーが大手へステップアップしようとすると、生産の完全自動化は不可欠です。そのためにも、CC-Link/CC-Link IEの技術に期待しています。今は順調そうに見える深圳のFPD業界ですが、その中には、このまま成長を持続することは難しいという危機感を持っている企業もあります。実際、最新技術をもっと取り入れていかないと、産業の将来はありません。CC-Link/CC-Link IEのような最新技術の普及をリードしているCC-Link協会様などの力をお借りして、深圳のFPDメーカーを支援していきたいと思います。 中村氏私達が是非お力になれればと思います。今後も、深圳ディスプレイ協会様を通じて、積極的に情報提供していきます。本日は、本当にありがとうございました。

偰 正才氏深圳ディスプレイ協会 秘書長

中村 直美氏CC-Link協会 事務局長

大谷 治之氏CC-Link協会 技術部部長

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