東京で行われたCLPAとPIの共同記者発表会

Vol.7 Special Report

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CC-Link IEとPROFINETが相互接続

IoT、Industry 4.0の時代に向けて強力なタッグ
CC-Link IEとPROFINETの相互接続実現へ
共通仕様策定し、異なる産業用ネットワーク間の通信が可能に

CC-Link協会(CLPA)は2015年11月、PROFIBUS & PROFINET International(PI)と協力関係を結び、両団体が展開する産業用オープンネットワークの相互接続性強化を目指すことを発表した。CLPAが普及を推進している「CC-Link IE」と、PIの「PROFINET」を接続する仕組みに関する技術仕様を共同で策定、生産現場で両者のネットワーク上にある機器や装置が相互に通信可能にする。ユーザは規格の枠に制約されることなく、自社の生産現場に適した装置や機器を自由に導入できるようになる点でメリットが大きい。

ドイツで行われた記者発表会にも、多くのプレス関係者が参加した

記者発表は日本とドイツの双方で行われた。CLPAとPI両団体の幹部が出席し、今回の連携内容について説明。互いに競合する存在と思われてきた両団体が協力関係を結ぶことのインパクトは大きく、日独いずれの記者発表会にも多くのプレス関係者が参加した。
発表の最大のポイントは、CC-Link IEとPROFINETの間をつなぐための共通の通信仕様を、CLPAとPIが共同で策定するとした点だ。CC-Link IEとPROFINETは規格が異なるため、現在はCC-Link IEのネットワークにPROFINET対応機器を直接つないだり、逆にPROFINETのネットワークにCC-Link IE対応機器を直接つないで制御したりすることはできない。しかし双方をつなぐゲートウェイの共通仕様が定義されれば、規格の違いによる制限はなくなり、ユーザの機器選定の自由度が飛躍的に高まることが期待される。

発表会ではCLPA会長の木村文彦氏(東京大学名誉教授)が「アジア発のCLPAと欧州発のPIが手を組むことで、世界中の製造業に貢献できる」とし、今回の協力関係による効果はグローバルに及ぶことを強調した。またPI会長のKarsten Schneider氏も「機器ベンダがCC-Link IEとPROFINET、2種類の対応機器を開発するような必要はなくなる」と、ユーザだけでなくベンダにとっても大きなメリットがあることを主張した。

「時代は変わった」

長年別々の規格を発展させてきたCLPAとPIが、それぞれのネットワークの相互接続を目指すことにした大きな理由は、「ユーザの実態に即した提案」を可能にするためだ。
産業用Ethernetで唯一1Gbpsの広帯域を実現しているCC-Link IEは、特に普及率の高い日本やアジアだけでなく、米国やPROFINETの発祥である欧州なども含めて、グローバルレベルで採用が広がっている。その優位性は業界から高く評価されているが、一方で現実にはCC-Link IE以外にもさまざまな産業用Ethernet規格が存在している。それらは相互に通信ができないため、ユーザは機器や機械の選定のたびに規格の違いを意識しなければならない。既存の設備を拡張するような場合に、常に規格の制約を受けているのがユーザの実態だ。
これまでCLPAとPIは、それぞれのネットワークを推進し、対応機器やユーザの拡張をはかってきた。しかしものづくりの発展を真に進めたいユーザにとって、規格の枠が阻害要因になってしまっていては意味がない。「産業用IoTやIndustry 4.0の世界では、個々の規格が単独で普及を図ってもユーザにメリットを提供できません。よりオープンな方向に舵を切ることが必要で、もはや時代は変わったと考えています」(CLPAの中村直美事務局長)。
ユーザの実態を踏まえ、従来の生産設備をそのまま運用しながら、異なる規格の機器も組み合わせて、さらなる高付加価値化を目指すユーザを後押しする。それが今回のCLPAとPIの協力関係構築とネットワーク相互接続の目的なのである。

CC-Link IEとPROFINETの相互接続の形態として「Coupler」と「Link」の2つが想定されている

早ければ2017年早々にも対応製品

相互接続の形態は2つ想定されている。既存のネットワークのシステムの中に別の規格のサブシステムを統合可能にする「Coupler」(カプラー)と、一つのネットワークの中に別のネットワーク対応の機器を直接つなぐ「Link」(リンク)の2つだ。いずれの接続形態でも、サイクリック通信によるデータ交換は異なるネットワークの間でも可能である。機器や装置のデータ収集も、CC-Link IEで各種の対応機器を接続するために使われているプロトコル「SLMP」(Seamless Message Protocol)及び「アサイクリック」で、双方向に行えるようにする方針だ。
相互接続の仕様策定のために、CLPAとPIの加盟企業による共同ワーキンググループが構成され、2016年に入って具体的な作業が始まった。2016年末までに仕様をフィックスし、その後CLPAとPIそれぞれの会員に仕様書が公開される計画だ。早ければ2017年早々にも対応製品が登場することが期待される。
また相互接続の世界は、CC-Link IEとPROFINETに閉じたものでは必ずしもない。他の産業用オープンネットワーク団体の参加も歓迎するとしており、2つのネットワークにとどまらない大きなうねりに発展する可能性を秘めている。
CC-Link IEの特徴は、CC-Link IEのユーザはもちろん、他のネットワーク規格を採用するベンダやユーザにも広く知れ渡っているが、地域や接続製品などの問題により、採用を迷う場合も少なくない。相互接続によりその困難が取り除かれることで、CC-Link IEへの支持はさらに高まるだろう。

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