Vol.2 FAの新境地を拓くCC-Link/CC-Link IE

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Special Conversation

CC-Link協会 × 北京現代汽車有限公司

生産性で高い評価を受ける北京現代汽車
自動化技術がブランド力向上の一つのカギに

中国の自動車産業をリードする企業の一つとして活躍する北京現代汽車有限公司。同社の工場は、現代自動車グループが世界各地に展開する数多くの工場の中でも特に高い生産性を発揮している。実は、この同社工場の生産システムの中でCC-Linkが活用されている。そこで、CC-Link事務局長の中村直美氏が、同社を訪問。生産本部生産企画部の李昌宰部長や保全部の姜元圭部長と、自動化技術が企業の発展に貢献する可能性などについて議論した。

中村氏北京現代汽車は、近年急速に発展した中国自動車メーカーの一つですね。 李氏北京現代汽車の設立は2002年10月18日。韓国現代自動車と中国北京汽車の合弁企業として誕生しました。ボリューム・ゾーンである排気量1600cc以下の小型乗用車とSUVを中心に「Accent」「Verna」「Elantra」「i30」「Moinca」「Sonata」「Tucson」といった製品を提供しています。中国自動車市場の発展とともに北京現代汽車の生産も急速に拡大しています。設立当初の生産能力は5万台/年に過ぎませんでした。現在の生産能力は100万台/年にも及びます。約10年で生産能力が20倍にも増えたわけです。 中村氏それだけ生産能力が増えているということは、10年間に生産設備をかなり増強したということでしょうか。 李氏完成車工場は北京市内に三つあります。創立当初から稼動している第1工場。2008年に建設した第2工場。2012年から稼動した第3工場です。第1工場は、もともと中国北京汽車の工場で、トラックを中心に生産していました。その建屋を利用しながら、最新の設備を導入しました。第2工場と第3工場は、新しく建設したものです。いずれの工場も生産能力は約30万台/年。三つの工場を合わせた生産能力は、ほぼ100万台です。
第2工場と第3工場の生産設備は、韓国の現代自動車が設計した生産設備を基本にして構築しました。一方、第1工場は、車体工場のプレスラインに既存の設備を流用した部分がありますが、塗装工場や組み立て工場は、現代自動車が設計した最新鋭の設備を導入しています。他の工場に比べて設備の点では、ほとんど差がないと思っています。

世界でも高い生産能力を実現

中村氏生産ラインが増えて、生産量や生産する品種が増えてくると、どうしても生産計画が複雑になります。生産設備の拡充とともに、より綿密な生産計画が必要になるはずです。 李氏その通りです。北京現代汽車の中で、その役割を担っているのが、私が担当する生産企画部です。生産企画部は、主に3工場の生産計画の立案、および工場の管理を受け持っています。新車の生産を立ち上げる際の生産体制を検討するのも生産企画部です。いずれの工場も、生産設備の基本設計は現代自動車が手がけていますが、3工場の生産効率を高めるための様々な改善プランを検討するのは私たちの部署です。その結果を踏まえた改善プランを韓国の現代自動車に提案しています。 中村氏北京現代汽車の3工場は、世界各地に点在する現代自動車の生産拠点の中でも、特に生産性が高いと聞いています。 李氏確かに生産性の点では高い評価を受けています。外部の調査会社がまとめたレポートの中で、生産性については世界130ヶ所の工場の中でトップ10の一つに選ばれていました。第1工場や第2工場の1時間当たりの生産台数は、現代自動車グループの完成車工場の中で3本の指に入ります。 中村氏工場の生産性を高めるための取り組みは数多くあります。その中でも特に重要なアプローチが自動化ではないでしょうか。特に高い品質を維持したまま、生産性を高めるためには高度な自動化技術が欠かせないと思います。北京現代汽車では、生産ラインの自動化について、どのように取り組んでおられるのですか。 李氏一般に、比較的安価な労働力が確保できる中国では、自動化率を高めることだけが事業的に有利だとは限りません。様々な条件に配慮しながら自動化を進める必要があると思っています。ただし、ここにきて中国でも人件費が急速に上がってきました。人件費が上がるにつれて自動化率を上げる方向に多くの企業が向かうのではないでしょうか。
北京現代汽車は、中国の自動車メーカーの中では自動化でかなり先行していると思います。特に自動化率が高いのは車体工場です。たとえば第2工場内にある車体工場のプレス工程や車体組立工程は完全に自動化しています。車体組立工程では数多くのロボットが稼動しており、1時間当たり73台のペースで生産が可能です。

車体工場で活躍するCC-Link

中村氏自動化を進めるうえで欠かせないのが産業用オープンネットワークです。私たちが推進している産業用オープンネットワークの規格「CC-Link/CC-Link IE」は、自動車や液晶ディスプレイなど最先端の工業製品をはじめ、様々な分野の工場における自動化に貢献しています。 姜氏CC-Linkは、私たちの工場でも活躍しています。先ほどの話にあったように北京現代汽車の工場設備は、現代自動車が設計した設備が基本になっています。そこには複数の産業用オープンネットワークが導入されており、CC-Linkもその中に含まれています。CC-Linkが使われているのは、主に三菱電機のPLC(programmable logic controller)を採用した部分です。具体的には、車体工場の組立工程です。
自動化システムに求める条件は、工場が稼動している国や地域の状況によって変わると思います。北京現代汽車の場合、特に重視しているは信頼性や使いやすさです。これに加えて機器ベンダーのサポートも重要です。グローバルな規模でサポートを受けられるのはCC-Linkの大きな利点の一つだと思います。実は、実際にCC-Linkに関して技術サポートを受けたことがあります。このとき韓国のサービス拠点からサポートを受けました。私たちの設備の基本は韓国で設計されていたからです。
中村氏「信頼性」はCC-Link協会も特に重視しています。CC-Linkの規格は本質的に高い信頼性が確保できるように設計されていますが、実際の生産ラインでは、複数のベンダーが提供した機器がCC-Linkで接続されている場合がほとんどです。このため様々なベンダーの機器が一つのシステムに混在しているときにも、システム全体の信頼性が確保できるようにする必要があります。そこでCC-Link協会では、異なるベンダーの機器をCC-Linkで接続したときの信頼を確保するための認証システムを設けています。

ブランド力向上に自動化の技術が貢献

李氏自動化の技術は、市場における北京現代汽車のブランド力を高めるうえでも重要です。いまや北京現代汽車の生産能力の点では中国国内でトップレベルになりました。今後の課題は、製品の付加価値と市場におけるブランド力の向上です。
ブランド力を高めるための重要なポイントの一つが、消費者にとって魅力的な製品を、タイムリーに提供することです。これを実現するためには、市場の要求に応じて的確に製品を生産できる体制が欠かせません。高い品質も確保する必要があります。これらの要求を同時に満たすために自動化の技術が必要になるわけです。
姜氏例えば、北京現代汽車の第一工場の生産ラインは、6車種に対応できるように設計されています。ところが、車種によって単位時間当たりに生産できる台数が異なります。これを平準化することによって、生産ラインの柔軟性が格段に向上します。これを実現するためには、それぞれの車種についてボトルネックとなる原因を特定し、それを考慮しながら各工程の作業時間を調整しなければなりません。ここでカギとなっているのが自動化の技術なのです。
市場の動きに柔軟に対応できる生産体制を実現するうえで、産業用オープンネットワークの技術に期待しているのが生産設備の故障を未然に防ぐ仕組みです。こうした仕組みがあれば、より着実に市場に製品を供給できる生産体制を実現することができるでしょう。
中村氏なるほど。自動化の技術は、ユーザーの皆さんに様々な形で貢献できるわけですね。今後もCC-Linkの動向に是非注目していて下さい。本日は、ありがとうございました。

李昌宰氏北京現代汽車有限公司
生産本部 生産企画部 部長

姜元圭氏北京現代汽車有限公司
保全部 部長

中村 直美氏CC-Link協会
事務局長

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