Vol.9 Cover Story

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CC-Link IEが中国国家標準「GB/T」を取得

「中国製造2025」の原動力として業界の期待高まる

中国の標準規格を管理する国家標準化管理委員会(SAC)は、「CC-Link IE」を中国の国家標準「GB/T」として認定した。CC-Link IEが既に国際規格として認知されていることや、中国の生産現場で広く採用されていることなどが評価されたもので、中国が国家レベルで製造業の競争力強化をはかるプロジェクト「中国製造2025」の原動力として期待が高まっている。

北京で行われたGB/T取得の発表会には製造業関係者など約100人が出席

中国が定める国家標準には大きく分けて、適用が強制される「GB」と適用を推奨する「GB/T」、適用を指導する「GB/Z」や業界別の標準規格などがある。GB/TはGBに次ぐ大きな影響力を持つ規格であり、ユーザが製品を選択する際の実質的な基準となっている。GB/Tであることを選定の前提条件としているユーザも少なくない。
国家が推奨する規格である以上、規格には合法性や継続性も当然ながら求められる。規格が国の法規制に抵触するものであったり、サプライヤによる長期的なサポートに不安があるようなものであったりしては、産業振興のために推奨するものには値しないからだ。

GB/Tとして認定されるためには、その規格が既に国際規格として認定され、グローバルで採用されているという実績も重要になる。SAC傘下で産業分野の規格策定を担当する機械工業儀器儀表総合技術研究所(ITEI:Instrumentation Technology & Economy Institute)は、産業分野の国際規格を取りまとめるIEC(国際電気標準会議)の活動への参画を通して国際規格の動向を把握。中国の国家標準として検討すべき規格を選び出し、SACへ提案するプロセスになっている。SACが承認すれば、ITEIの中に製品ベンダやユーザ、設計者などから成るワーキンググループが構成され、具体的な検討が始まる仕組みだ。
CC-Link IEはこのプロセスを経て、推奨国家標準「GB/T33537.133537.1~.3-2017」として正式に認定された。CC-Link IEがIECの国際規格を取得済みということに加えて、中国だけでなくアジア全域で広く使われていることを評価したという。

「中国製造2025が求めるものに合致」

「CC-Link IEでは製造業の上位の管理部門から現場の生産現場まで、あらゆる層のシステムをシームレスにつなぐことが可能になります。またCC-Link IEはPROFINETなど他の産業用ネットワークとの相互接続実現も進めており、縦と横の双方向につながる範囲を拡大させていることが、中国のものづくりに大きな効果をもたらすと考えました」。そう語るのは、ITEI所長で中国科学技術部「智能製造」専門家ワーキンググループメンバーの欧陽劲松氏だ。
欧陽氏が製造業のシームレスな接続を重視する背景には、中国が国家レベルで進めている製造業改革「中国製造2025」がある。豊富な労働力と相対的に低廉な人件費を武器とした中国には、世界中の製造業が工場を進出させてきたが、最近では他の新興国の追い上げを受けている。そこで国全体でものづくりの高付加価値化をはかろうというのが中国製造2025だ。
高付加価値化には生産現場だけでなく、経営層も含めたものづくり全体での最適化が必要になる。そのための接続機能が充実しているCC-Link IEは「中国製造2025が求めるものに合致している」(欧陽氏)。またCC-Link対応ベンダが多いことに加えて、CC-Link IEのテストセンタが既に中国国内に設けられていることも、CC-Link IEを国家標準として認定すべきと判断するに至った理由だったという。

液晶パネルの搬送に活用

CC-Link IEのGB/T取得を受け、2017年4月19日には北京市の釣魚台国賓館でITEIなどの主催による発表会が開催された。製造業関係者など約100人が出席した発表会にはメディアも約20社が参加。中国製造2025という国家レベルのプロジェクトに直結する発表でもあることから、メディアからの関心も高かったようだ。
発表会ではITEIやCC-Link協会からの説明だけでなく、CC-Link IEを導入しているユーザからの事例発表も行われた。その一社、熊猫電子集団は南京工場の液晶パネル搬送にCC-Link IEを活用し、インテリジェントな搬送を実現していることを説明した。
ITEIは規格策定だけでなく策定後の普及推進の役割も担っており、今後はCC-Link協会と共同でモデル生産ライン構築なども進めていく方針という。CC-Link IEは現時点でも中国の生産現場で高いシェアを誇るが、国家標準取得とその推進役を味方につけたことで、普及がさらに加速することだろう。

発表会では熊猫電子集団がCC-Link IEを活用した液晶パネル搬送システムの事例を紹介
CC-Link IEのGB/T取得には中国メディアも高い関心を示した。
写真はインタビューに答える欧陽劲松ITEI所長(中央)と冨永毅CC-Link協会事務局長(右)
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