Vol.1 アジアで躍進するCC-Link/CC-Link IE

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5

Special Feature

グローバル戦略

日本発の産業用ネットワーク「CC-Link/CC-Link IE」
アジアを中心にグローバルな規模で普及が加速

日本で生まれた産業用オープンネットワーク「CC-Link」。その普及に努めるCC-Link協会(CLPA)は、「Gateway to China」をモットーに掲げて中国における普及活動を一段と強化している。産業用ネットワークを駆使した高度な自動化に取り組む動きが、一部の先進企業から中国の製造業全体に広がる機運が高まってきたからだ。中国での普及が進むとともに、すでに約4割のシェアを占めるアジア市場はもとより、世界市場におけるCC-Link/CC-Link IEの存在感が着実に高まっている。

CC-Linkの普及推進団体であるCC-Link協会が設立されたのは2000年11月のことだ。設立からこれまでの約12年間に、CC-Link/CC-Link IEに対応した機器の開発やシステム構築に携わる企業を積極的に支援することで、同規格の普及を図ってきた。2012年10月現在で、CC-Link/CC-Link IE対応製品の数は1253機種に上り、同協会の活動を支持するパートナー会員数は1747社に達している。わずか134社だった設立当初に比べて約13倍以上に増えた(図1)。
CC-Link/CC-Link IEを支持する企業は世界に広がっており、パートナー会員数の約60%は日本以外の企業が占める。具体的には、欧州、北米、中国、韓国、台湾など世界各地の企業が、パートナー会員に加わっている。「特にアジア地域では、韓国や台湾がけん引する形で普及が進んでおり、アジア地域の産業用オープンネットワーク市場におけるシェアは約40%と業界随一を誇っています。液晶パネル、ガラス、自動車、タイヤなどを手掛ける大手企業が主なユーザーです」(CLPA事務局長の中村直美氏)。

図1 国内外で着実に増えるCLPA会員
中国における普及を積極支援

パートナー会員およびユーザーを支援するためにCLPAは、韓国、台湾、米国、ドイツ、中国、シンガポール、インドと世界各地に拠点を置いてグローバルな活動を展開している(図2)。その中で、いま普及に向けた取り組みに特に力を入れているのが中国である。「中国では、ものづくりの質的な変化が始まっています。これにともなって工場の自動化技術を重視する動きが、製造業全体に広がってきました。この大きな波に乗って、これからの数年間に中国におけるCC-Linkのシェアを20%以上まで伸ばす考えです」(CLPAマーケティングマネージャーの長島嘉明氏)。
かつての中国におけるものづくりは簡単な組み立て作業が中心だった。最近では組み立てだけでなく部品や材料を手掛ける企業も中国国内に増えており、ものづくりの裾野は着実に広がっている。その一方で、市場の拡大とともに生産性を高める必要にも迫られている。同時に品質に対する市場の要求も一段と厳しくなってきた。こうした動きに対応するために、産業用オープンネットワークを利用した高度な自動化技術に注目する企業が増えているというわけだ。実際に、中国における工場の自動化をリードしている自動車業界の中でも最先端を走る一汽轎車股份有限公司(FAW Car Co.,Ltd.)は、CC-Linkを利用した工場の自動化にいち早く取り組んでいる。

図2 CC-Link協会が世界に展開する拠点
関連製品のサプライヤの支援を強化

中国におけるCC-Link/CC-Link IEの普及を加速する活動を展開するに当たって同協会が掲げたモットーが「Gateway to China」である。「CC-Link/CC-Link IEの普及を図るためには、中国国内で流通するCC-Link関連の機器やサービスのラインアップを一段と充実させることが重要です。そこで、CLPAが橋渡し役となり、CC-Link関連ビジネスを手掛ける企業の中国市場参入を促そうというのが、このモットーに込められた考えです」(中村氏)。
具体的には、市場開拓と製品開発の二方向からCC-Link/CC-Link IE関連企業を支援する。例えば市場開拓に向けた支援策として、CLPAが中心となってCC-Link対応製品のPR活動を展開する。「製品を紹介する広告を中国の有力業界に掲載したり、ユーザーに直接情報を伝えることができる技術セミナーを企画したりしています。機関誌やWebセミナーなど無償で利用できるメディアも積極的に提供するつもりです」(長島氏)。例えば最近では、2012年8月30日に台北市内で開催された「FPD International Taiwan 2012」、2012年9月18日と19日の2日間にわたって中国の北京国家会議中心で開催された「FPD International CHINA 2012/Beijing Summit 」といった二つのフラットパネル・ディスプレイの大型イベントに参加している。「フラットパネル・ディスプレイは高度な自動化が進んでいる分野の一つです。この業界のキーパーソンが集まる国際的なイベントでCC-Linkの実績とその裏づけとなっている優位性をアピールしました」(長島氏)。
製品開発については、CC-Link対応に必要なASICや推奨部品、指定部品が同梱された開発支援キットを同協会が無償で配布する。このキットがあれば速やかに製品開発に着手できる。このほか、CC-Linkの規格認証試験にかかる費用を同協会が負担するサービスも提供している。「今後、グローバルな半導体メーカー各社がCC-LinkやCC-Link IEに対応したASSP(Application Specific Standard Product)など多様な半導体チップを相次いで市場に投入する予定です。これによってCC-Link接続製品が一段と開発しやすくなります。さらに『Gateway to China』を掲げるCLPAが提供する様々な支援策を活用することで、開発ベンダー様にCC-Link接続製品を容易に開発していただき、伸張著しい中国市場で有利にビジネスを展開していただきたいと考えています」(長島氏)。
日本はもとよりアジア地域で多くの企業に支持 されているCC-Link/CC-Link IE。当初の仕様に加えて、情報系システムと生産系システムをシームレスに結合できるEthernetベースの仕様「CC-Link IE」が加わるなど規格自体も着々と進化を続けている。さらなる飛躍に向けて生産体制の強化を進める新興国の企業に強力なソリューションをもたらすキー・テクノロジーとして、CC-LinkおよびCC-Link IEはますます注目を集めるに違いない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5