Vol.3 自動化の可能性を拓くCC-Link/CC-Link IE

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Special Interview

CC-Link協会 × 北京京東方显示技術有限公司

中国FPD産業をリードする8.5世代工場
CC-Link/CC-Link IEの今後の展開に期待

液晶ディスプレイをはじめとするフラットパネル・ディスプレイ(FPD)の生産ラインは、CC-Link/CC-Link IEが活用されている用途の一つだ。そこで、CC-Link協会(CLPA)事務局長の中村直美氏とCLPAテクニカル部会部会長の大谷浩之氏が、FPD産業が急速に発展している中国で最新鋭の8.5世代工場を稼働させている北京京東方显示技術有限公司(Beijing BOE Display Technology)のCF工場 副工場長を務める常程氏に、自動化に対する最近の取り組みや最新のニーズなどについて聞いた。

中村氏Beijing BOE Display Technologyと8.5世代工場について教えていただけますか。 常氏Beijing BOE Display Technologyは、京東方科技集団股份有限公司(BOE Technology Group)の傘下にあるグループ会社の一つです。BOE Technology Groupは、中国の液晶ディスプレイ産業を創世記からリードしてきました。2003年ごろに、中国の液晶ディスプレイ業界に参入。その後、北京市に第5世代、合肥に第6世代、成都に第4.5世代と着々と生産拠点を増やしてきました。これらに続くBOE Technology Groupの最新工場が、Beijing BOE Display Technologyが担当する北京市の第8.5世代工場です。2011年9月から量産を開始しました。
この工場では、モバイル機器などに向けたタッチパネル搭載の7インチ型から大画面テレビ向けで業界最大の110インチ型まで、幅広い種類の液晶ディスプレイパネルを生産しています。現在の生産能力は月産11万枚。さらに月産12万枚まで生産能力を高める計画で、生産設備の増強を図っているところです。

情報系とのシームレスな接続が重要に

大谷氏自動化に対する取り組みを教えて下さい。 常氏自動化の推進は重要な課題の一つと認識しています。BOE Technology Group董事長の王東升氏は、イノベーションが必要な領域の一つとして生産技術を挙げています。このイノベーションの軸となるのが自動化です。こう考える背景には、人件費が上昇してきたことがあります。生産ラインにおける自動化率を高め、上昇する人件費に対応しなければ、市場における競争力を失うことになりかねません。すでに、私たちの生産システムの中でCC-Link/CC-Link IEの技術が活躍していますが、その役割はますます重要になるでしょう。
自動化に加えて、生産現場で発生する様々な情報をコンピュータで統合管理することで生産の効率化を図るCIM(Computer Integrated Manufacturing)の導入も進めています。ここでは、生産設備で収集した膨大な量のデータを速やかに処理できるように、生産設備をつなぐネットワークと上位の情報系を結ぶ通信システムに、クラウド・コンピューティングなどの先進的な技術を積極的に採り入れる考えです。この仕組みの中でも、CC-Link/CC-Link IEの技術を活用するでしょう。
大谷氏情報系と生産設備間の通信システムを強化している理由は。 常氏生産ラインから情報系に上がってくる情報量が飛躍的に増えているからです。これには大きく二つの理由があります。一つは、工場の規模が大きくなったことです。工場内の製造装置の台数が増えるにつれてデータ量が増えています。もう一つの理由は、一つの生産設備で生産する製品の種類が増えていることです。消費者のニーズの多様化とともに多品種少量生産の傾向が着実に進んでいます。これとともに、生産設備で扱う情報量が増えるでしょう。 大谷氏確かに生産現場と上位の情報系の通信は重要なポイントです。CLPAでは、Ethernetで構成した情報系と生産現場のCC-Link IEネットワークをシームレスに接続するための共通プロトコル「SLMP(Seamless Message Protocol)」を定めています。SLMPに対応しておけば、工場内のネットワークと情報系ネットワークを合理的に接続することができます。

「信頼性」と「相互運用性」を重視

中村氏すでにCC-Link/CC-Link IEを採用していていただいていますが、産業用ネットワークの規格を選択する際に重視しているポイントを教えて下さい。 常氏大きく五つのポイントがあります。重視している順番にご紹介しましょう。もっとも重視しているのが、「信頼性」。生産ラインが停止すると、大きな損失が発生します。二番目は、機器間の相互運用性(Interoperability)。様々なベンダーの機器を組み合わせてネットワークを構築する際の柔軟性を実現するうえで重要です。三番目は費用対効果。さらに四番目がデータ伝送速度。最後の五番目が通信距離と接続できるノードの局数です。 中村氏CC-Link/CC-Link IEについては、どのように評価していますか。 常氏すべてのポイントにおいて満足しています。ただし、データ伝送の高速化には引き続き取り組んで欲しいですね。 中村氏CC-Link/CC-Link IEは、データ伝送速度が1Gビット/秒と産業用ネットワークの規格の中でも群を抜いています。それでも、もはや十分ではないということですか。 常氏データ伝送速度に十分な余裕があると思っていましたが、最近では安心していられなくなってきました。しかも、生産ラインにおけるデータ量が増える新たな要因が次々と出てきています。
例えば液晶ディスプレイの製造装置は、まだ大型化する可能性があります。ガラス基板の大型化が止まったとしても、生産能力を高めるために製造装置自体を高速で動かす必要もあります。これらによって工場で扱うデータはますます増えるはずです。さらに、より高度な技術を採用した新しいディスプレイを生産することになれば、製造プロセスが複雑になるので生産ラインで扱うデータ量の増加に拍車がかかると見ています。
実際に私たちは生産ラインにおけるデータ通信のタイミングを0.0何秒の単位で測定しています。生産ラインのタクトタイムに影響を与えるからです。
大谷氏伝送速度に対する市場のニーズには注意した方が良いかもしれませんね。 常氏世界で最も収益性が高い8.5世代工場にするのが目標です。これを実現するうえで、産業用ネットワークは重要な技術の一つだと思っています。優れた自動化技術は、液晶ディスプレイ以外の業界にも広がるはずです。CC-Link/CC-Link IEの今後の展開に期待しています。

中村 直美氏CC-Link協会
事務局長

大谷 治之氏CC-Link協会
テクニカル部会 部会長

常程氏北京京東方显示技術有限公司
(Beijing BOE Display Technology Co., Ltd.)
CF工場 副工場長

このインタビューについて

今回の常程氏とCLPAの対談は、2013年9月10日〜11日の2日間にわたって北京市内で開催されたフラットパネル・ディスプレイ(FPD)関連のイベント「FPD International China 2013/ Beijing Summit」(主催:中国光学光電子行業協会液晶分会,日経BP社)の会期中に会場内で実施した。CLPAは、このイベントの展示会に出展するとともに、生産技術にかかわる中国FPD業界のキーパーソンと日本の自動化関連企業が一堂に介するラウンド・テーブル形式の会議に参加。CC-Link/CC-Link IEの優位性をアピールした。

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