Special Edition 世界に躍進するCC-Link/CC-Link IE

Special Interview

独BalluffがCLPA幹事会の新メンバーに
CC-Link/CC-Link IEの世界展開に弾み

ドイツの大手FA機器メーカーBalluff GmbH(以下、Balluff)が、2013年9月からCC-Link協会の幹事会に8番目のメンバーとして加わった。2008年にCC-Link協会の会員資格を取得した同社が、新たに幹事会に参加し、CC-Link/CC-Link IEの普及に積極的にかかわることにした理由などについて、同社Business Unit Networking and Business Unit Systems Vice PresidentであるJürgen Gutekunst氏に聞いた。

ドイツBalluff GmbHのIP/67/IP65準拠 防水型CC-Link I/Oブロック
─産業用センサーの大手でありBalluffは、90年以上の歴史を持つ企業ですね。 Gutekunst氏創業者のGebhardBalluff氏が、この会社を立ち上げたのは1921年でした。いわゆる同族会社で、現在のトップは4代目です。Balluffは、グローバルな規模で事業を展開しており、世界50カ国以上に販売拠点を展開しています。生産拠点は、中国成都の工場を含めて合計8カ所。開発の中心は、シュツットガルト近郊にあるノイハウゼンの本社ですが、ハンガリー、スイス、アメリカにも開発拠点を置いています。
主力事業は産業用センサーで、中でも誘導型センサーでは、市場をリードする企業として知られています。最近では産業用ネットワークをはじめとする自動化システムの領域にも事業を広げているところです。

─Balluffが展開するビジネスの特長を教えて下さい。 Gutekunst氏お客様の要望にただ応えるだけでなく、独自の付加価値を併せて提供するように心掛けています。この付加価値は、際立った特長を備えた革新的な製品の実現に貢献するはずです。
これを実践するために高度な技術革新は必ずしも必要ではありません。日常のお客様との対話の中で出てくる些細なことがキッカケで実現できると思っています。その一例が、弊社が提供しているネットワーク機器やRFIDモジュールなどデバイスの取り付け方法です。私たちが提供するデバイスの多くは、二つのネジで固定できるように設計されています。従来品では、4カ所で固定するようにしていたのを2カ所に減らしました。これによって設置する時の作業工数を半減できます。最近の大規模工場では、数百台ものデバイスが設置されています。一つひとつの取り付け作業で節約できるコストや作業時間はわずかですが、これだけの台数になると、全体ではかなりのものになります。
取り付け穴の削減は、お客様の要求ではなく、当社が独自に実施したものでした。当初は、それほど反応はありませんでしたが、時間とともに注目して下さるお客様が増えており、最近では当社製品の大きな特長の一つになっています。
もう一つの例として紹介したいのが、当社のCC-Linkモジュールに設けた統合ディスプレイです。従来機で使われていたロータリ・スイッチに代わるものです。見やすいバックライト付き液晶ディスプレイを見ながら、簡単にアドレスを設定できるうえに、ハードウエアとソフトウエアの状態をモニタすることができます。ちょっとした工夫ですが、作業効率は格段に向上するでしょう。

アジア市場開拓の足がかりに

─産業用ネットワーク領域に進出した経緯は。 Gutekunst氏Bulluffの経営陣は、産業用ネットワーク市場への進出を前提に、コアとなるセンサー事業を強化する方針を2005年に決定しました。これが自動化の領域への最初の1歩です。この当時の課題は比較的シンプルで、まず主要製品の品揃えを補うことでした。現在は、I/OモジュールやRFIDシステムなど各種CC-Link対応モジュールをはじめ、プラグ・コネクターや様々なネットワーク機器なども揃え、自動化システム全体を視野に入れたネットワーク・ソリューションの展開を進めているところです。産業用ネットワークへの進出を決めた経営陣には先見の明がありました。この分野を担当する部門の業績は、このところ急速に伸びており、伸び率は2桁後半に及んでいます。 ─2008年にCC-Link協会(CLPA)に加入した理由を教えて下さい。 Gutekunst氏大きな理由は、急成長しているアジア市場の開拓に本腰を入れるためでした。センサーだけでなく自動化システムの市場を有利に開拓するためには、アジアのFA市場で高いシェアを持つCC-Link/CC-Link IEの普及を推進しているCLPAのサポートが必要だと考えました。 ─欧州に基盤を持つ企業でCLPAの幹事会メンバーになったのはBalluffが初めてです。 Gutekunst氏CLPAの活動に密接にかかわることは、急速に発展しているアジアの自動化システム市場の動向を的確に把握するうえで有利です。この一方で、過去の私たちの経験が、CLPAの活動に役立つと思っています。自動化システムにおける分散化のトレンドは、欧州や北米で先行したからです。CLPAの活動を通じて、これから分散化に取り組むアジアの皆さんの取り組みに貢献したいと思っています。センサーやアクチュエータ向け通信の国際標準規格「IO-Link」といった新しい自動化技術をアジアにおいて普及させるうえでも、先行する欧州企業の経験が役立つでしょう。
ただし、欧州や北米で起きたこととまったく同じことが、アジアで進むとは限らないということも念頭に置いています。例えば、最先端の自動化技術が可能にする時間的な高効率化は、低賃金のアジア諸国では必ずしも業績向上に貢献しません。この一方で、輸出国を目指す中国では、欧州や北米で先行している最新の自動化技術が必要とされています。それぞれの地域の要求に応じた貢献をするつもりです。

欧米における地位向上を後押し

─幹事会社として期待されていることは。 Gutekunst氏CC-Link/CC-LinkIEのグローバル化を一段と加速することだと考えています。産業用オープン・ネットワークには複数の規格があり、欧州、北米、アジアといった地域ごとに、それぞれの規格の市場シェアに偏りがあります。こうした地域性は近い将来になくなるのではないでしょうか。これにとともにCLPAのタスクはますます大きくなるはずです。
特にCC-Link/CC-Link IEの普及をリードするCLPAは、欧州と北米における存在感を高めることが大きな課題の一つだと認識しています。その支援をできるのがBalluffです。
低価格化への対応、生産性向上、ユニットのコストダウンといったお客様の要求は、当面は変わりません。変わるのは、問題を解決に近づけるための技術です。つまりCC-Link/CC-Link IEの成功は、CC-Link/CC-Link IEの技術が市場の要求に、いかにうまく応えられるかにかかっていると言えるのではないでしょうか。これまでに幅広い産業を網羅しているBalluffならば、新たな市場のニーズを掘り起こすとともに、これに応じた技術の最適化に貢献できると思っています。
─CLPAと共同で進めているプロジェクトについて教えて下さい。 Gutekunst氏いま三菱電機と連携してCC-Link IE Fieldの技術を製品に統合するプロジェクトを進めています。ネットワーク・モジュールだけでなく、私たちが得意とするRFIDコントローラにもCC-Link IE Fieldを組み込む予定です。こうした機器は、分散型自動化システムの進化を促すはずです。これに向けてCLPAと連携しながら、積極的に普及を図る考えです。 ─Balluffが本拠地を置くドイツでは、新たな産業革命「Industry 4.0」の実現を目指すプロジェクトが進んでいます。 Gutekunst氏Industry 4.0で標ぼうする製造プロセス技術革新の実現に積極的にかかわる方針です。センサ・システムをはじめ、Ethernetベースの先進的なネットワーク技術CC-Link IE、工場における加工段階の制御と識別に役立つRFID技術。さらに、機器自体が機能の一つとして製造シーケンスや管理シーケンスを決定するインテリジェントIT対応コンビネーション・システムといったBalluffの先進技術の数々がIndustry 4.0の実現に貢献します。先進的な取り組みを通じて獲得した技術やノウハウは、CLPAにおける活動にも役立てるつもりです。期待していて下さい。

Jürgen Gutekunst氏Balluff
Business Unit Networking
and Business Unit Systems
Vice President