Vol.1 アジアで躍進するCC-Link/CC-Link IE

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Interview

CC-Link協会 × 中国光学光電子行業協会液晶分会

大型FPD工場が続々と立ち上がる中国
「CC-Link/CC-Link IEが生産にもたらす進化に期待」

大規模な装置と複雑なプロセスを必要とするフラットパネル・ディスプレイ(FPD)。その生産ラインは、もっとも高度な自動化技術を必要とするシステムの一つだ。その進化に、産業用オープンネットワークをはじめとする自動化技術がどのように貢献できるのか。いま大規模なFPD工場の建設が活発化している中国でFPD産業振興に取り組む業界団体「中国光学光電子行業協会液晶分会」の秘書長を務める梁新清氏に、CC-Link協会事務局長の中村直美氏が聞いた。梁氏は、中国のLCD産業の黎明期から業界をリードしてきた企業の一つとして知られる京東方科技集団(BOE Technology Group)の副董事長でもある。

中村氏中国FPD産業の概況を教えてください。 梁氏まず、中国のFPD産業のこれまでについてお話しましょう。中国企業が液晶ディスプレイ・パネルでFPD産業に参入したのは、2003年ごろのことです。日本企業や台湾企業よりも10年は遅かったと思います。
実は私が在籍している中国BOE Technology Groupは、中国の中でももっとも早く参入した企業の一つです。もともとはCRT(Cathode Ray Tube)、いわゆるブラウン管を生産していましたが、CRTからFPDへと移行する動きにいち早く注目し、2003年に液晶ディスプレイ・パネル・メーカーの韓国Hyundai Display Technology社を買収する形でFPD業界に参入しました。当初の生産ラインは、3.5世代のガラス基板を使って生産していましたが、2005年には北京市に第5世代のガラス基板に対応した液晶ディスプレイ・パネル工場を建設しました。このころ、上海広電集団や昆山龍騰光電も、第5世代の液晶ディスプレイ・パネル工場を立ち上げています。中国のFPD産業が形になってきたのは、このころと言えるのではないでしょうか。
中村氏いまではFPDは大きな産業に育ちました。 梁氏その通りです。FPDを重点産業と位置付けた中国の中央政府および地方政府が、様々な支援策を打ち出してきました。このおかげで、この10年間に大きく成長したのです。いま中国国内には14本のFPD生産ラインがあります。さらに新たに6本の生産ラインを建設する計画が進行中です。2011年の時点では、中国で生産した液晶ディスプレイの数が、世界全体の生産量に占める割合は、まだ6%に過ぎません。計画中の生産ラインが全て立ち上がるころには、この割合は20%程度を占めるようになるでしょう。

有機ELへの移行でラインが変わる

中村氏この10年間に液晶ディスプレイの市場が拡大した背景には様々な要因がありますが、その一つにガラス基板の大型化があったと思います。つまり大型ガラス基板を採用することで生産性を高め、コストを下げることで市場拡大につながったわけです。ガラス基板の大型化にともなって装置が巨大化したり、プロセスが複雑化したりしたことで、制御に関連する様々な課題が浮上しました。この問題を解決するうえでCC-Linkの技術も様々な形で貢献しています。もっとも、このトレンドに最近では変化が見られるようですが。 梁氏確かにガラス基板の大型化の技術は、液晶ディスプレイ・パネル・メーカーにとって競争力の源泉になっていました。最近では、この状況は変わっています。さらなる大型化によって、コストダウンが図れるとは限らなくなったからです。
この一方で、中国のFPDの生産ラインでは新しい動きが始まろうとしています。有機ELディスプレイへの移行です。市場に出ている有機ELディスプレイは、いまのところモバイル機器向けの中小型品が中心ですが、近い将来には大画面化が進みテレビ受像器への展開が始まるでしょう。こうした動きが進むとともにFPDの主流は液晶ディスプレイから、有機ELディスプレイに代わる可能性があります。
実は液晶ディスプレイの生産設備の一部は、有機ELディスプレイの生産に転用することが可能です。つまり、一部の装置を入れ替えると同時に、生産ラインのレイアウトを変更することで、有機ELディスプレイ・パネルの生産設備を実現できるわけです。遠くない将来に、液晶ディスプレイ・パネル工場を有機ELディスプレイ工場に切り替える動きが顕著になるのではないでしょうか。

大手FPDメーカーの多くが採用

中村氏有機ELディスプレイへの生産に移行するタイミングで、CC-Linkを活用していただける機会が増えることが期待できそうですね。すでにCC-Linkの技術は多くのFPDメーカーに採用していただいています。実は、世界のFPDメーカーの大手5社の工場のうち80%が、CC-Linkを導入していると言われています。業界でいち早く有機ELディスプレイの量産を開始した大手FPDメーカーの工場でもCC-Linkが活躍しているようです。
産業用オープンネットワークの規格はいくつかありますが、日本で生まれたCC-Linkは、アジア地域でシェアが高いのが特長です。その中でも特にシェアが高いのがFPD産業の中心と言われる日本、台湾、韓国なのです。この理由の一つは、世界で名だたるFPD製造装置メーカーが、CC-Linkの発祥の地である日本に集まっていることがあります。製造装置メーカーがCC-Linkを採用し、これがFPDメーカーで採用されたことによって、CC-Linkがアジア地域に広がったわけです。
梁氏製造装置メーカーが、こぞってCC-Linkを採用した理由を教えてください。 中村氏高い信頼性が評価されたからだと思います。例えば、CC-Linkを使ったネットワークでは制御データとともに様々な情報のデータを伝送することができますが、伝送する情報量の増減によって制御のパフォーマンスが変化しないように設計されています。これは、特にレシピ・データなどの伝送データ量が多く、制御精度に対する要求が厳しいFPD生産システムにとっては重要なポイントです。
オープンな規格であることからCC-Linkに準拠した製品を様々なベンダーが提供していますが、CC-Linkに準拠した製品ならば、どのベンダーの製品を使っても安定した性能のネットワークが構築できます。CC-Link対応製品の品質は、普及団体であるCC-Link協会が中心となって厳密に管理しているからです。この点も高く評価されていると思います。

1Gbpsの「CC-Link IE」も展開

梁氏先ほどお話ししたように、これから既存の液晶ディスプレイの生産ラインを有機ELディスプレイの生産ラインに改修する企業が出てくると思います。こうしたタイミングでCC-Linkの技術を導入することは可能なのですか。 中村氏もちろん可能です。改修と同時に生産ラインのパフォーマンスを一段と高めたいというメーカーは多いと思います。こうした方々には、Giga Bit Ethernetを物理層とするCC-Link IEの採用をお勧めします。生産プロセスが一段と高度化すると、ネットワークを流れる情報量がぐっと増えるはずです。CC-Link IEならば1Gbpsと高速のデータ伝送が可能です。ここまで高速のデータ伝送が可能な産業用ネットワークの規格は、いまのところ他に見当たりません。実は、この仕様は、液晶ディスプレイ業界の皆さんから聞いた要望に応えて決めた経緯があります。 梁氏高品質のFPDパネルは、できるだけ人手を排除した極めてクリーンな環境で生産する必要があります。このため自動化の技術が特に重要な業界の一つと言えるのではないでしょうか。今後、FPDの進化とともに製造技術が高度化するにつれて、自動化技術に対する要求も一段と厳しくなる可能性があります。CC-Linkの技術を推進する皆さんには、こうした要求に応えていただけるように、さらに技術に磨きをかけていただきたいですね。 中村氏是非、中国のFPD業界の皆さんの期待に応えたいと思っています。CC-LinkおよびCC-Link IE等CC-Linkファミリーの普及を図るうえで中国市場は重要です。そこで中国におけるCC-Linkファミリーの普及を加速するために、「Gateway to China」というモットーを掲げて、CC-Linkファミリーに関連するビジネスを手掛ける企業の中国市場参入を後押しする活動に取り組んでいます。この活動が進むとともに、中国でCC-Linkファミリーが一段と活用しやすくなるはずです。本日は、ありがとうございました。

梁新清氏中国光学光電子行業協会液晶分会
秘書長

中村 直美氏CC-Link協会
事務局長

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