Vol.1 アジアで躍進するCC-Link/CC-Link IE

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Interview

CC-Link協会 × 一汽轎車 Part1

市場の多様化に合わせて生産体制を強化
「進化のカギを握るのは自動化の技術」

中国の自動車業界の最大手として知られる中国第一汽車集団公司(China FAW Group Corp)。その傘下で乗用車の生産を手掛ける一汽轎車股份有限公司(FAW Car Co.,Ltd.)は、高品質と高い生産性の両立を図るために、生産システムの自動化に積極的に取り組んでいる。いまや世界でもトップレベルの自動化生産システムを駆使する同社は、CC-Linkの技術を高く評価する企業の一つだ。そこで同社経営陣の一人で生産システムを担当する汪玉春氏に、最新の取り組みや、CC-Linkの評価などについて聞いた。

一汽轎車は、中国第一汽車集団の100%出資子会社で、主に乗用車の生産を手掛けている。1997年に設立された同社は、2012年で15年目を迎えたところだ。現在生産しているのは、中国の最高級車で同社のフラッグシップモデルに当たる「紅旗(Hongqi)」をはじめ、「奔騰(Besturn)」「欧朗(Oley)」といった自社ブランドの車輌。これに加えて「Mazda 6」や「Mazda 8」など中国第一汽車集団が提携しているマツダのブランドの車輌も生産している。現在、同社が抱える主な生産工場は、第1工場、第2工場、紅旗の専用工場の三カ所である。これらに加えて、新たに第3工場を建設する計画を進めている。
いま同社は、高品質を追求しながら生産性を高めるのと同時に、複雑な生産計画にも柔軟に対応できる生産体制の実現に取り組んでいる。「最近、中国市場では自動車の需要が伸びる一方で、自動車に対する消費者の要求が多様化しています。こうした動きに対応するためです」(汪氏)。汪氏は、この取り組みを進めるうえで最優先しているのは「品質」だと強調する。「工場を立ち上げの際に設備や人員の最適な配置を検討する際にも、品質を意識しています。さらに量産が始まってからは、社内の品質管理システムにしたがって、高品質を維持するために設備、材料、部品、人員配置を厳しく管理しています」(汪氏)。このために同社はHPS(Hongqi Production System)と呼ぶ独自の生産管理システムを設けている。中国第一汽車集団が提携しているトヨタ自動車やマツダが実践している生産管理方式の理念を採り入れて、同社が独自に構築したものだ。

新工場では「新エネルギー」と「デジタル化」

高い生産性と高品質を両立させることは工場における大きな課題である。この課題に挑むうえで重要な役割を担うのが自動化の技術である。「新しい工場を建設する際に、自動化システムは重要なポイントです。このため私たちの工場には、最新鋭の自動化システムを導入しています」(汪氏)。例えば、2010年から立ち上げた第2工場の溶接工程には、200台ものロボットを導入している。一つの工程だけで、これだけのロボットを使っている工場は、中国では珍しいという。「ロボットの導入によって、この工程に携わる人員の数を半減させたにもかかわらず、生産性は2倍に高まりました。人による作業を減らして人的ミスの発生を抑えたことによって、品質の向上も図ることができました」(汪氏)。
新たに建設する第3工場では、さらに進んだ取り組みに挑戦する。「工場を建設するときには、毎回テーマを決めて新しい技術の導入に挑戦し、工場全体のコンセプトを進化させています。第1工場のテーマは『標準化工場』、第2工場のテーマは『自動化工場』、第3工場については『新エネルギー工場』と『デジタル化工場』の二つをテーマに掲げています」(汪氏)。
第1工場では作業や工程の標準化を進めることによって、品質と生産性の向上を目指した。第2工場では第1工場よりも高度な自動化システムを導入し、品質を維持しながら一段と生産性を高めた。新たな第3工場は、環境配慮型自動車の製造拠点と位置付けたうえで、工場自体の省エネも追求する。これに加えて、工場全体の情報化を進める考えだ。「最新技術を活用して自動化率を高めると同時に、ネットワーク技術を駆使して製造装置間の連携を強化。これによって生産性と品質を高めるつもりです。現在、これらの実現に向けて詳細を検討しています。さらに情報システムを進化させて開発と生産が一段と密接に連携できるようにする考えです」(汪氏)。これらによって、生産効率を高めると同時に、顧客のニーズに柔軟に対応できる強力な生産体制を実現する。

デジタル化に貢献するCC-Link
一汽轎車股份有限公司の第2工場の内部とそこに設置されたCC-Link機器

高度な自動化を進めるうえで、重要な役割を担う技術の一つが産業用ネットワークだと同氏は語る。「上位情報システムの開発は関係会社が担当しており、この会社と連携しながら高度な産業用ネットワークシステム構築に、積極的に取り組んでいます」(汪氏)。
同社の工場では、複数の種類の産業用ネットワークを導入しており、最も多く使用しているのがCC-Linkだという。「最初にCC-Linkの技術を導入したのは2004年のことです。いまでは第1工場、第2工場、紅旗専用工場のいずれにおいてもCC-Linkが活躍しています。これから建設する第3工場でも、CC-Linkを採用することになるでしょう」(汪氏)。
ライン間や装置間の連携を一段と進めるなど、自動化に関して同社の工場で取り組むべき課題は数多くあるという。同社は、その課題の解決に向けてCC-Linkをはじめ有力な自動化技術を積極的に採り入れる方針だ。「生産システムのさらなる効率化を実現するために、情報システムと生産システムを融合する取り組みも必要になるでしょう。ベンダーの皆さんには、こうした高度なシステムを実現するためのソリューションを積極的に提案していただきたいと思っています。今回紹介していただいたEthernet ベースの統合ネットワーク『CC-Link IE』は、大容量のデータを1Gビット/秒もの高速で安定して伝送することができます。今後、高度な生産システムを構築するうえで役に立つでしょう。生産システムの信頼性向上にも寄与するものと期待しています」(汪氏)。

左:汪玉春氏一汽轎車股份有限公司
(FAW Car Co.,Ltd.)
副総経理

右:中村 直美氏CC-Link協会 事務局長

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