Vol.1 アジアで躍進するCC-Link/CC-Link IE

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Interview

CC-Link協会 × 一汽轎車 Part2

産業用ネットワークは信頼性が重要
情報系との融合に向けた新技術に期待

中国を代表する自動車メーカーの一つである一汽轎車股份有限公司(FAW Car Co.,Ltd.)のインタビューの第2弾。CC-Link協会事務局長の中村直美氏が、実際に生産ラインの設計に携わる同社技術部設備設施科研究員の陳剛氏に、工場の自動化システムに対する考え方や、自動化システムの基盤となる産業用ネットワークにCC-Linkを導入した理由などについて聞いた。自動化システムは「信頼性」が最も重要と語る陳氏は、CC-Linkの基本設計を高く評価しているという。

中村氏一汽轎車は、中国の自動車メーカーの中でも、生産ラインの自動化に積極的に取り組んでいる企業の一つではないでしょうか。 陳氏そうですね。品質と生産性の両立を図る上で自動化の技術は重要ですので、特に力を入れてきました。自動化のレベルは中国でもトップクラスだと思います。中国には多くの自動車メーカーがあります。ただし、その多くが自動化については世界全体のレベルに達しているとは言い難いのが現状です。世界のトップ企業が導入しているシステムに引けを取らないレベルに達しているのは、一汽轎車をはじめ、上海GM、広州ホンダなど中国自動車メーカーのトップ数社程度ではないでしょうか。 中村氏一汽轎車における自動化の現状を教えていただけますか。 陳氏現在、第1工場、第2工場、最高級車「紅旗」の専用工場の三つの組み立て工場を展開しているほか、エンジン工場とギア工場も抱えています。最初に建設した第1工場の生産設備における自動化システムは、もはや最新鋭とは言えなくなっていますが、2010年に立ち上げた第2工場および紅旗専用工場には最先端の自動化システムを導入しています。例えば、我々は主な生産工程では殆ど世界最先端の製造設備を導入しており、ロボットだけで400台以上を使っています。

選択の最重要ポイントは「信頼性」

中村氏中国では都市部を中心にした人件費の高騰など生産拠点を運営する上での様々な課題が浮上していると聞いています。こうした課題を解決する上で自動化技術はますます重要になるのではないでしょうか。 陳氏中国の自動車メーカーは、生産規模が拡大するにつれて、生産性と品質の両立や、生産コストの削減など様々な問題に直面しています。こうした問題を解決するために、自動化の技術は欠かせません。今後、ますます高度化する問題を解決するために、ソリューション・ベンダーとの戦略的な提携が必要になるでしょう。
自動化システムを発展させるうえで産業用ネットワークが果たす役割は大きいと思います。すでに様々な産業用ネットワークの規格が登場していますが、その中からどの規格を選択するか、あるいはどれを選んで組み合わせるかは、システムを構築する際に十分に検討しなければなりません。規格を比較する上で私たちが注目しているポイントは、大きく五つあります。すなわち、(1)信頼性、(2)規格のオープン性、(3)機器の入手性と使いやすさ、(4)市場におけるシェアの高さ、(5)導入コストです。
中村氏いま挙げていただいた五つのポイントは、CC-Linkの普及を図る上で私たちが重視しているポイントとまさに同じです。その中で特に力を入れてきたのが「信頼性」です。具体的には異なるベンダーの機器間における相互運用性の確保にCC-Link協会は取り組んできました。例えば、規格適合試験の徹底です。すでに市販されているCC-Link対応機器は1200種類を超えていますが、このいずれもCC-Link協会が実施している厳しい規格適合試験に合格した製品です。このため、どのメーカーの製品を組み合わせても確実に動作します。これは、ユーザーの皆さんが信頼性の高い生産システムを実現するうえで重要ことではないでしょうか。
実際、こうした取り組みを進めてきた結果、アジアを中心にCC-Linkを採用する企業は確実に増えています。日本では産業用ネットワークの市場の約6割をCC-Linkが占めています。韓国や台湾でも市場シェアはほぼ50%となっています。

陳氏確かにCC-Linkの技術は、優れていると思います。これまで当社では、いろいろな種類の規格の産業用ネットワークを導入してきましたが、最近ではCC-Linkを採用する範囲が着実に広がっています。 中村氏実際にCC-Linkは、どのような工程に使われているのでしょうか。 陳氏例えば、第1工場では、溶接と全ての組み立て工程、搬送システムにCC-Linkが使われています。他の規格のネットワークを採用しているのは、塗装やプレスなど一部の工程だけです。ここはラインに設置した装置の仕様に合わせて導入することになりました。塗装やプレスなどの工程での設備は主に欧州から導入されているため、多く欧米系ネットワークを採用しています。

情報化に貢献するCC-Link IE に注目

中村氏CC-Linkは、着々と進化しています。例えば、CC-Linkの技術を基に生まれたEthernetベースの統合ネットワーク「CC-Link IE」が2007年に登場しました。情報系と工場のフィールドをシームレスに接続できるCC-Link IEは、生産現場だけでなく、情報系を含めた生産システム全体の最適化に貢献します。こうした技術をどのように見ていますか。 陳氏Ethernetをベースにした産業用ネットワークは、扱える情報量が格段に多いはずです。これは、生産システムの情報化を進めるうえで役に立つでしょう。最近では生産システムの管理が、従来よりも複雑になってきました。例えば市場における消費者のニーズの多様化に対応するため、自動車のブランドや車種が増えています。これにともなって一つの生産ラインで生産する車種が増えており、生産システムで扱う情報量は増える一方です。今後、こうした動きが進むにつれてCC-Link IEのような多くの情報量を高速で扱える産業用ネットワークに対するニーズは高まるでしょう。 中村氏生産システムの強化に取り組む皆さんを、CC-Link協会は積極的に支援する考えです。生産システムに関して問題に直面したときは、是非相談してください。 陳氏実は、いま社内に生産システムにかかわる技術者を対象にしたトレーニング・センターを設立しようとしています。ここでは、CC-Linkなど産業用ネットワークに関する訓練プログラムも提供するつもりです。こうした活動に力を貸していただくかもしれません。 中村氏そのときには喜んでお手伝いさせていただきます。本日はありがとうございました。

陳剛氏一汽轎車股份有限公司
(FAW Car Co.,Ltd.)
技術部 設備設施科 研究員

中村 直美氏CC-Link協会
事務局長

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