Vol.4 Special Interview

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グローバル戦略

将来を見据えて活動を強化
アジアにおける戦略を拡大

産業用オープンネットワーク「CC-Link/CC-Link IE」の普及をリードするCC-Link協会(CLPA)は、EthernetベースのCC-Link IEの普及を一段と加速。さらに新たなプログラム「Gateway to Asia」を展開し、アジアにおける活動をより一層強化する。産業用オープンネットワークの市場に新しい流れを作り、パートナー企業が有利にビジネスを展開できる環境を整えるとともに、今後の発展が期待されているアジアの製造業におけるCC-Link/CC-Link IEの存在感を一気に高める考えだ。

CLPAが活動を開始した2000年11月以降、CLPAの活動を支持するパートナー企業の数は、一貫して増え続けている。設立時点で134社だったパートナー企業の数は、2013年3月末時点で2097社に増えている。このうちの約70%を海外企業が占める(図)。同じ時点で、CC-Link/CC-Link IE対応製品の数は1356種類に及び、出荷ノード数は1200万台を超えている。
世界に広がるパートナー会員およびユーザーを支援するためにCLPAは、韓国、台湾、米国、ドイツ、中国、シンガポール、インドなどに拠点を構えてグローバルな活動を展開している。最近では、2014年3月にトルコのイスタンブールに新しい支部を開設したところだ。今後は世界の生産拠点として成長が著しいASEAN地域にも新たな拠点を展開する考えだという。「安価な労働力、政府による優遇策、経済発展がもたらす消費の拡大などを背景に、ASEANに生産拠点を設ける企業が増えています。ただし、こうした生産拠点の多くは、まだ自動化が進んでいるわけではありません。こうした自動化の黎明期にあるASEANに、いち早くCC-Link/CC-Link IEの普及の流れを作りたいと考えています」(CLPA事務局長 中村直美氏)。

図1 着々と普及するCC-Link/CC-Link IE
(左)パートナー会員数/(右)CC-Link 対応製品数
CC-Link IEの普及を加速

CLPAが、目下力を入れるのが、Ethernetベースの規格であるCC-Link IEの普及である。「Ethernetをベースとした産業用オープンネットワークの市場は、今後急成長するでしょう。あるレポートでは、年率15%もの高い成長率を維持すると書かれています。この市場における覇権を握れば、それ以降の産業用オープンネットワーク市場の流れを大きく変えることができるはずです。それによってパートナー企業の皆さんが一段と有利にビジネスを展開できるようになるでしょう」(中村氏)。
CC-Link IEの普及を図るうえでの大きな強みの一つは、先進的なスペックである。例えば、他のEthernetベースの産業用ネットワークをはるかに上回る1Gbpsのデータ伝送速度である。「CC-Link IEの仕様は、時代を先取りしています。発表した当初は産業用オープンネットワークでは、ここまで高速にする必要はないとの見方もあったほどです。ところが、ここにきて、将来を見据えてCC-Link IEの優れたパフォーマンスに注目する企業が増えてきました」(中村氏)。この背景には、激しいグローバル競争を勝ち抜くために、高い生産効率を実現し、経営効率を徹底的に追究することを迫られている企業が増えていることがある。こうした企業は、生産や品質に関する膨大な情報を活用すると同時に、工場内の装置や、それらをつなぐ神経系とも言えるネットワークの高速化や大容量化に目を向けている。「こうした要求に対応できるのがCC-Link IEの特長です。まさに、これからがCC-Link IEの時代と言えるでしょう」(中村氏)。
CLPAは、CC-Link IEが、CC-Linkと同様に「日本発」の技術であることにこだわりたいという。「長年にわたって培ってきたものづくりの経験やノウハウが随所に反映されているCC-Link IEは、『性能』『品質』『耐久性』のいずれにおいても優れています。世界中のユーザーに自信を持ってお勧めできる技術です。先進的な工場の導入事例や、優れたパフォーマンスをアピールしながら、普及活動を一段と強力に推進します」(中村氏)。

アジアに戦略を拡大

グローバルな活動を展開するCLPAの、もう一つの大きな取り組みが、アジア地域での活動強化である。「Gateway to Asia」を新たなモットーに掲げ、アジア地域におけるCC-Link/CC-Link IEの普及促進を図る。CLPAは2011年から『Gateway to China』をスローガンに、CC-Link/CC-Link IE対応製品を手掛けるパートナー企業が中国市場でビジネスを拡大するための様々なプログラムを展開してきた。中国で、自動化技術を重視する機運が高まってきたからだ。「かつて簡単な組み立て作業を手掛ける企業が多かった中国で、組み立てだけでなく部品や材料を生産する企業が増えました。しかも、市場の拡大とともに、生産性を高める必要に迫られる企業が増えたことや、品質に対する市場の要求が厳しくなったことから、産業用オープンネットワークを利用した自動化の技術に注目する企業が増えました」(中村氏)。
中国をターゲットにした活動では、すでに一定の成果が得られた。「例えば、中国進出するにあたってCC-Link/CC-Link IEを採用する欧米の機器メーカーがぐっと増えました」(中村氏)。中国でCC-Link/CC-Link IEの採用が伸びる手応えが得られたことから、この戦略をアジア全体へと拡大した。
活動は、従来の方向を維持する。つまり、アジア地域に流通するCC-Link/CC-Link IE関連の機器やサービスのラインアップを充実させることでCC-Link/CC-Link IEの普及を加速させる。「CLPAが橋渡し役となり、CC-Link/CC-Link IEを手掛けるパートナー企業のアジア進出を促す考えです」(中村氏)。具体的には、CLPAが中心となって、展示会への出展やセミナーなどのイベント開催などのPR活動を展開。CC-Link/CC-Link IE対応機器を開発する企業のために、専用LSIや推奨部品、指定部品が同梱された開発支援キットを提供したり、CC-Linkの規格認証試験にかかる費用をCLPAが負担するサービスなども提供したりする。「アジアにおける製造業の状況や、必要とされている技術や製品などの情報を積極的に収集。これをパートナー企業の皆さんに速やかフィードバックすることで、CC-Link/CC-Link IE対応製品のラインアップ拡大や、CC-Link/CC-Link IEの普及を後押します」(中村氏)。
グローバルな規模で、一段と活発に動き始めたCLPA。産業用オープンネットワークの世界に新たな変化をもたらすかもしれない。

図2 「Gateway to Asia」のイメージ

中村 直美氏CC-Link協会 事務局長

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