Vol.3 自動化の可能性を拓くCC-Link/CC-Link IE

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Special Interview

CC-Link協会 × AS-International Association

AS-InternationalとCLPAが連携強化
共同のプロモーション活動を展開

フィールドエンドの省配線ネットワーク・システム「AS-Interface(AS-i)」の普及推進を担う世界規模の団体AS-International AssociationとCC-Link協会(CLPA)は、共同のプロモーション活動を始める。その背景や、こうした取り組みに対する今後の期待などについて、AS-International Association CEOを務めるRolf Becker氏にCC-Link協会事務局長の中村直美氏が聞いた。

中村氏20年以上もの歴史を持つAS-iは、センサレベルの省配線システムの中で圧倒的な存在感を見せています。これまでAS-iの普及をリードしたAS-International Association(以下、AS-International)のプロフィールや活動について改めて教えていただけますか。 Becker氏1991年にドイツの連邦教育科学研究技術省の後押しで設立されたAS-Internationalは、フランクフルト近くのゲルンハウゼンに本部を置き、AS-iの規格策定とマーケティングを手掛けています。世界中に約350もの会員企業を抱え、ブラジル、中国、日本、アメリカなどいくつかの国や地域に拠点を展開しています。AS-i対応機器が最初に製品化されたのは1994年です。いまやAS-iは、フィールドエンドの省配線システムの市場で圧倒的なシェアを握っています。具体的には、これまでに1700種類ものAS-i対応製品が市場に登場しており、実際にフィールドで使われている機器の数は2500万台を超えています。

優れた特長を数多く備えるAS-i

中村氏AS-iが広く普及した理由は。 Becker氏どのフィールドバス・ネットワークにも適合する規格であることが大きな理由です。一般的な自動化システムは、「制御レベル」「フィールド・レベル」「センサー/アクチュエータ・レベル」の大きく三つの階層に分けることができます。このうち制御レベルとフィールド・レベルに対応したフィールド・バスについてはいくつかの規格があり、それらの市場におけるシェアが地域によって異なります。例えば、北米および南米ではEthernet IPとDeviceNet、欧州ではProfinetとProfibus、アジアではCC-Link IE FieldとCC-Linkが、それぞれ市場をリードしています。
これらのフィールド・バスのいずれにも接続できるようにAS-iの規格は設計されています。だからこそ、フィールドエンド層に当たるセンサー/アクチェータ・レベルでは、世界中でAS-iが圧倒的な市場シェアを獲得することができたのです。性能だけでなく、コストの面で有利な規格であることもAS-iが多くのユーザーに支持されている理由だと思います。
中村氏具体的には。 Becker氏例えばAS-iを使用することで、配線に要する時間と作業を約40%削減。これによって、配線にかかわるコストを大幅に削減できます。従来、生産設備の周りはケーブルの束が山のようにありました。しかも、その多くが無作為に配線されていました。ここに、ケーブルを追加しようとすると、全ケーブルを引き抜き、繋ぎ直さなければならないという事態に直面します。この場合、膨大な作業時間と費用が掛かってしまいます。
AS-iを使えば、スレーブとマスタを接続するケーブル1本でシステム全体を網羅することができます。配線がシンプルなので、センサーを簡単に再配置することが可能です。しかも、物理的に誤接続を防止する仕組みも盛り込んであります。つまり特別な予備知識がなくても組み立てられるように、あらかじめ配慮されているわけです。これによって取り付け工事にかかる時間も大幅に短縮できます。
これらの強みを生かしながら、さらにAS-iの普及を加速するためにAS-Internationalは、AS-i対応製品の相互運用性を確保する取り組みも進めてきました。具体的には、会員企業が提供する全製品について所定の仕様に適合していることを確認しています。これによってユーザーは、350社もの会員企業が提供しているAS-i対応製品を自由に組み合わせて使うことができます。同じ機能ならば違うメーカーの製品に置き換えることもできるので、調達の面でも有利です。

連携を強化してユーザーに貢献

中村氏CLPAとAS-Internationalは、世界各地域におけるプロモーション活動を共同で展開するために相互連携することにしました。AS-Internationalが考える、この連携のメリットをお聞かせ下さい。 Becker氏まず、いま一度強く申し上げておきたいことは、AS-iはどのフィールドバス・ネットワークにも適合するということです。つまり、AS-Internationalは、CLPAとの連携のみを強化するつもりはありません。ただし、CC-Link/CC-Link IEが、市場をリードする重要なシステムの一つであることは確かです。こうしたシステムを推進するCLPAとAS-Internationalが、力を合わせることでCC-Link/CC-Link IEを採用するユーザーの皆さんに、AS-iの優位性を確実に伝えることができます。
実はCC-Link/CC-Link IEとAS-iは補完関係にあります。つまり、AS-iを利用することで、CC-Link/CC-Link IEをベースにしたソリューションに、効率的良くセンサーやアクチュエータを組み込みことができるでしょう。その一方で、CC-Link/CC-Link IEを利用することで、AS-iで構成したシステムを上位層の制御システムに合理的に接続することができます。
中村氏個々のネットワークの優位性についてはAS-InternationalとCLPAが、それぞれにユーザーにアピールしていますが、二つのネットワークを組み合わせたときのメリットをユーザーに適切に伝えるために両者が連携することは重要だと思います。 Becker氏CC-Link/CC-Link IEへのゲートウェイ機能を備えたAS-i対応製品は、2001年に行われた両団体の連携に関する最初の話し合い以前からありました。その当時、AS-Internationalにとって、アジア市場でトップシェアを誇るCC-Linkに対応した製品を手掛けるメーカーに、AS-i対応製品を提供してもらうことは重要な課題でした。
このため、両団体の連携は双方に大きな利点があると考えました。つまり。CC-Link協会はAS-iを利用してヨーロッパ市場へのアプローチを強化できます。AS-Internationalにとっては、CLPAとの連携でアジア市場への進出に向けた足場を作ることができます。
今後、AS-International とCLPAの連携はますます重要になるでしょう。すでにAS-Internationalの会員の多くはCLPAの会員です。しかも、こうした会員企業の多くがCC-Link/CC-Link IEとAS-iの両方に対応する製品を提供しているからです。
これからCC-LinkとAS-i両方に対応する製品を開発する企業が増えれば、より包括的な連携ができるようになるでしょう。これによって、CC-Link/CC-Link IEとAS-iに対応したシステムの可能性が広がるなど、より大きな利点をユーザーに提供できるはずです。

共同展開の動きが活発化

中村氏その通りです。CC-Link/CC-LinkIEは、アジアでは圧倒的なシェアを持つNo.1のネットワークです。CLPAとの連携は、間違いなくアジア市場で普及の大きな足がかりとなるはずです。CLPAとしては、AS-Internationalとの連携によって、CC-Link/CC-Link IE対応機器の製品ポートフォリオの中で比較的手薄なセンサーの品揃えが充実することや、欧州におけるCC-Link/CC-Link IEの知名度やシェアが高まることを期待しています。 Becker氏展示会への共同出展やセミナーの共同開催、パンフレットの作成など様々な協業が始まっています。こうした動きの先鞭をつけたのが2013年4月にドイツで開催されたHANNOVER MESSE(国際産業技術見本市)への共同出展でした。この後、イタリアのパルマで開催されたFA関連の展示会SPS IPC Drives にも同じ形で共同出展しています。2013年11月に日本で開催されるシステム コントロール フェア 2013では、CLPAの展示ブースにAS-Internationalが登場する予定です。
具体的なスケジュールはこれからですが、日本をはじめ世界各地でセミナーを共同開催する計画が進んでいます。このセミナーでは、AS-iとCC-Link/CC-Link IEの特長や、両システムの連携を図ったり、一貫システムを構築したりするための技術などを解説する予定です。すでに中国でこうしたセミナーを2回開催し、来場者から高い評価を受けました。
中村氏次のステップとしても色々と目指すべき点がありますね。 Becker氏地域によって市場のニーズが異なるため、当分の間は地域別の需要に確実に対応することが共通の課題になると思います。どんなアプリケーションにでも最適な形で対応できるソリューションを提供するには、広範囲を網羅する製品を揃える必要があります。
AS-iとCC-Link/CC-Link IEの親和性を高めるために共通の規格を設ける必要もあるかもしれません。また、CC-LinkとAS-iの両方に対応する製品の数を、先行している欧州だけなくアジアにおいても増やすことも共通の課題です。このために、AS-InternationalとCLPAが協力してマーケティング活動を展開し、両規格に対応した製品を開発する企業を支援したいと思っています。
工場建設を手掛けるエンジニアリング会社や装置メーカーの皆さんに、制御レベルとフィールド・レベルを統合するソリューションの利点を理解していただくことは、現在の課題であり、今後も重要な課題だと思います。とにかく、もっとも重要な共通の目的は、お客様に喜んでいただくことではないでしょうか。
中村氏同感です。まずはAS-iとCC-Link/CC-Link IEの両方を活用した事例と、そのメリットを積極的にアピールしたいですね。次のステップとして、個々のユーザーや機器メーカーへのアプローチにも取り組みたいと思っています。こうした活動を通じて汲み上げた市場の要望を、実現することで、より多くのメリットをユーザーに提供するつもりです。

Rolf Becker氏AS-International Association
CEO

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