Vol.3 自動化の可能性を拓くCC-Link/CC-Link IE

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Special Interview

CC-Link協会 × 上海重型機器廠有限公司

省エネの強化に取り組む中国重工業大手
CC-Link IEで高度なエネルギー管理を実現

中国屈指の規模を誇る国営企業グループ上海電気集団の傘下にある大手重工メーカー上海重型機器廠有限公司は、CC-Link IEを利用した先進的なエネルギー監視制御システムを構築。工場全体の省エネを強力に推進している。省エネに関する同社の取り組みや中国国内でいち早くCC-Link IEを導入した経緯などについて、CC-Link協会事務局長の中村直美氏が、上海重型機器廠有限公司副総経理の叶志強氏に聞いた。

中村氏上海重型機器廠有限公司の手掛ける製品について教えて下さい。 叶氏上海重型機器廠有限公司は、冶金、鍛造、鋳造などによる金属の熱加工と機械加工を主に手掛けています。つまり、材料から完成品まで一貫して生産できる体制を整えています。発電所のタービンなど大型の金属加工品が主な製品です。上海市西南区にある本社の敷地内に八つの工場があります。そのうち三つは熱加工、四つは機械加工。もう一つは溶接工場です。
2011年の売上額は34億元です。中国国内では、冶金では10%、鍛造では15%、鋳造では35%と多くの分野で高いシェアを握っています。国家レベルの技術開発センターを抱えており、技術の面でも中国随一だと自負しています。
中村氏工場の省エネルギーに力を入れていると聞いています。 叶氏熱加工や機械加工は、どうしても大きなエネルギーが必要です。例えば、2011年に私たちの工場で消費したエネルギーを石炭の重さに換算すると18万8000トンにも上ります。上海電気集団はグループを挙げて省エネに取り組んでいますが、多くのエネルギーを使う当社はグループの中でも特に省エネの効果が大きいと考え、その推進に力を入れています。

CC-Link IEを利用して統合管理

中村氏その具体的な取り組みの一つが、CC-Link IEを使ったエネルギー監視制御システムですね。その概要を教えていただけますか。

図1 上海重型機器廠有限公司のエネルギー監視制御センター(能源監控中心)
叶氏工場内のボイラや炉などに様々なセンサーを取り付けて収集したデータを統合管理することで、工場全体で消費するエネルギーを「見える化」するシステムです(図1)。「エネルギー監視制御センター(能源監控中心)」で、電気、天然ガス、石炭ガス、酸素、蒸気のそれぞれについて工場内における消費量を速やかに把握できます。同時に、工場で使うボイラや炉の温度管理もできるようにしました。こうしたシステムで使われている数多くのセンサーの情報をオンラインで収集するためのネットワークにCC-Link IEを利用しています。
前期と後期の2期に分けて構築する計画で、これまでに前期の工事を完了しました。現時点のシステムで、データを収集するノードの数は667カ所に上ります。これで全体の約95%を占める設備のエネルギー消費量を把握することが可能です。このシステムは、エネルギー管理システムやFAシステムなどを手掛ける上海電気菱電節能控制技術有限公司(SERT:Shanghai Electric Ryoden Energy Saving and Control Technology)と2009年から約2年かけて共同で開発しました(SERTについては別掲の記事を参照)。
図2 大幅に小型化した鍛造炉のプロセス管理システム写真左側がペンレコーダを並べた従来システム。右側の枠内がCC-Link IEを使った新しい管理システムの端末。

中村氏導入の効果は。 叶氏一つは、データを様々なグラフで表示する機能を設けたことで、エネルギーの利用状況を一段と詳しく分析できるようになったことです。これによってエネルギー消費の最適化を図り、エネルギーにまつわるコストを削減することができました。
もう一つの大きな効果は、加工プロセスに関するデータを自動的に蓄積する仕組みが実現できたことです。これによって製造プロセスを一段と厳しく管理できるようになりました。従来はペンレコーダを使った自動記録装置を多数並べていましたが、新システムを導入したことで、この装置を大幅に小型化することができました(図2)

「高速」と「高信頼性」を評価

中村氏CC-Link IEの技術に対する評価を聞かせて下さい。 叶氏エネルギー管理システムを設計するに当たって重視したのが、情報の「即時性」でした。これに対してデータ伝送速度が速いCC-Link IEを利用することをSERTが提案して下さいました。実際のシステムでは、多数の情報を最短2秒で更新することができます。
高い信頼性を備えていることも大きな利点です。システムが稼働してから約2年間に、CC-Link IEの信頼性の高さを実感しています。
中村氏ありがとうございます。「高速」と「高信頼性」は、私たちがCC-Link IEの特長としてアピールしているポイントです。今後の展開について教えて下さい。 叶氏すでに後期の作業に取りかかっています。後期に開発する大きなポイントの一つは消費電力管理機能の強化です。この機能強化によって一段と省エネを進めることができるでしょう。このほか情報処理システムの機能も強化を図ります。具体的には、収集した情報を随時解析して、あらかじめ設定したしきい値を測定値が超えそうになったときに、いち早く警告を発する仕組みを盛り込む考えです。 中村氏機能を強化するには、新たなCC-Link/CC-Link IE対応機器が必要になるのではないでしょうか。CC-Link/CC-Link IE対応機器のラインアップが一段と充実するように、CLPAは普及活動を一段と強力に進めるつもりです。本日は、ありがとうございました。

叶志強氏上海重型機器廠有限公司 副総経理
技術中心主任 教授級高級工程師

中村 直美氏CC-Link協会
事務局長

渡部 裕二氏上海電気菱電節能控制技術有限公司 総経理
システムの視点で中国市場開拓を支援

上海重型機器廠有限公司のエネルギー監視制御システムを共同開発した上海電気菱電節能控制技術有限公司(SERT)は、2012年9月にCLPAの活動の中核を担う幹事企業に新たに加わった。同社総経理の渡部裕二氏は、中国市場における経験とシステム・ベンダーの視点を生かして、CC-Link/CC-Link IEのアジア展開に貢献する考えだ。

SERTは、上海電気集団の傘下で環境関連事業を手掛ける上海電気環保投資有限公司と、三菱電機の中国現地法人の合弁企業として2011年2月に設立されました。主にエネルギー管理システムやFAシステムの設計および開発を手掛けています。

CLPAの幹事は、これまでFA機器ベンダーで構成されていました。ここにシステム事業を提供する当社が加わったことは、CC-Link/CC-Link IEの普及を図るうえで大きな意義があると思います。産業用ネットワークの技術は、ユーザーのニーズに応じて構築されたシステムの中で活用されるからです。
これに加えて、CLPAが力を入れているCC-Link/CC-Link IEのアジア展開にも貢献する考えです。SERTは、幹事企業の中では3社目の外資系企業。しかも、中国に拠点を構えています。市場ニーズを積極的にCLPAにフィードバックするなどして、中国におけるCC-Link/CC-Link IEの普及を積極的に後押しする考えです。
CC-Link IEを、いち早く採用した上海重型機器廠有限公司のエネルギー監視制御システムは、その先鞭となる良い事例ではないでしょうか。CC-Link IEをエネルギー管理に応用した同社のシステムは、CC-LinkIEが様々な分野に広がる可能性を秘めていることを明確に示しています(談)。

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