Vol.5 Special Interview

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CC-Link協会 × Maruti Suzuki(インド)

「26秒に1台」のクルマづくりを支えるCC-Link
インド最大の自動車メーカーの基盤として導入拡大

世界中の製造業が注目する新興国市場。中でもインドは、人口規模の大きさに加えて経済成長と人口増が続く国として、世界各国から熱い視線が注がれている。政府も拡大を支援するインドの製造業の中でも、特に大きな存在感を示すのは自動車産業だ。そのインドの自動車市場で最大のシェアを誇る自動車メーカーMaruti Suzukiは、インドの旺盛な自動車需要に応えるために、工場の基盤ネットワークにCC-Linkファミリーを活用し、フレキシブルな生産体制を実現している。インドの自動車産業の事情や、CC-Linkファミリーが自動車生産に果たす役割などについて、Executive DirectorのRajeev Gandhi氏をはじめとしたMaruti Suzuki幹部に聞いた。

(聞き手:CC-Link協会事務局長・中村直美、CLPA India Chairman・Sunil Mehta)

中村インドは2011年11月に国家製造業政策(National Manufacturing Policy)を打ち出すなど、政府が積極的に製造業の強化に取り組んでいるように感じられます。実際、インドのあらゆる産業の中で、製造業はどのような位置を占めているのでしょうか。 Gandhi氏確かにインドでは製造業が大きな存在感を示しています。インドのGDPのうち16%が製造業によるものです。政府は国家製造業政策などを通して、この割合を2022年までに25%に高める方針を掲げています。これと連動する形で国家技能開発会議(National Skill Development Council)は、製造業を支える人材育成も強化しており、製造業拡大により1億人の新規雇用を生み出そうとしています。インドが発展し続ける上で、製造業の発展は重要テーマと位置付けられているのです。 Sunilインドが国を挙げて強化する製造業の中でも、特に自動車産業にかかる期待は大きいですね。 Gandhi氏インドの自動車産業はGDPの7%を占めます。つまり製造業の約半分が自動車産業というわけです。雇用への影響も大きく、自動車産業で働く人は、間接的に自動車産業に関連している人も含めると1900万人にものぼります。政府が製造業を発展させるうえで、自動車産業の発展に力を入れるのは当然とも言えるでしょう。
一方でインドは、実は自動車の普及がそれほど進んでいません。人口1000人あたりの自動車普及台数は、他の新興国が500〜600台なのに対し、インドはわずか15台程度です。しかし裏を返せば、それだけ市場の将来性があるということになります。自動車普及の阻害要因の一つである道路インフラについても、政府は現在、1日20kmを目標に国内の道路整備を進めているところです。

14モデル150車種を全土へ届けるため
ラインの停止は許されない

Delhi郊外のManesarにあるMaruti Suzukiの工場

中村追い風を受けているインドの自動車産業には、世界各国の自動車メーカーが参入することで、競争も大変厳しいのではないかと思います。その中でもMaruti Suzuki様がインドで最大シェアを維持し続けている理由は、どこにあるのでしょうか? Gandhi氏Maruti Suzukiは約30年に渡って、インドの自動車産業のリーダー的役割を果たしてきました。2013年度は、インド国内市場全体では前年度比6.1%減となりましたが、Maruti Suzukiの販売台数は0.5%増となり、42%の市場シェアを確保しました。2014年第1四半期(2014年4〜6月)は、国内市場は1.5%増とプラスに転じましたが、Maruti Suzukiはそれを大きく上回る10%増を達成し、シェアは45%にまで高まっています。
Maruti Suzukiが高いシェアを維持できている理由の一つは、小型のバンから大型の高級車まで、すべてのセグメントをカバーできるラインナップを取りそろえていることに加えて、インドの広い国土全体をカバーする幅広いセールス網を構築している点でしょう。Maruti Suzukiは国内の大小1034の都市を結ぶ販売ネットワークと、1449の街に広がるサービスネットワークを築き、どんな小さな街でも顧客に新しいクルマを届けやすい体制ができています。実際、Maruti Suzukiの売り上げの20〜25%は、そうした小さな街での販売実績によるものです。
Chaturvedi氏Maruti Suzukiが作るクルマは全部で14モデル、計150車種にものぼります。これだけ多彩なラインナップのクルマを、あらゆる街の顧客に届けるためには、生産ラインがトラブルなく稼働し続けなければなりません。もし生産ラインが何らかの原因で短時間でも停止してしまうと、その損失は計り知れないものになるでしょう。Maruti Suzukiは26秒に1台のペースでクルマを作り続けているからです。
持続的な稼働を追求するうえで、FAは重要な役割を担っています。生産量を拡大させながら生産効率を高め、さらにヒューマンエラーを防止することが、FAで可能になります。ミスを防ぎながら作業の時間短縮化を進めたり、組み立て工程で発生する重要なパラメータを収集し管理したりすることも、FAの導入効果であり、それによりMaruti Suzukiは多彩な車種のクルマをたくさん作り続けることができているのです。
中村Maruti Suzuki様には、主力のGurgaon工場で早くからCC-Linkファミリーをご活用いただいております。それも、多彩な車種のクルマを作り続けるというMaruti Suzuki様が掲げるテーマを推進するうえで、有効とお考えになられたからでしょうか。 Sarkar氏さまざまな車種のクルマを同じ生産ラインで組み立てるとなると、制御用のレイヤーと情報通信用のレイヤーで、それぞれ大きなデータをやり取りできなくてはなりません。特に現在は、生産のトレーサビリティを確保するために、扱うデータは増大し続けています。
Ethernetベースで1Gbpsの広帯域性を持ち、制御系と情報系を一つのネットワークで処理できるCC-Link IEは、まさにそのニーズに合致したネットワークと言えます。ネットワークを集約できたことで、ケーブルの障害や緩みによる設備停止の可能性も低減できています。
Gurgaon工場ではもともとCC-Linkを使っていましたが、1Gbpsの広帯域などこうしたメリットを生かすために、新しいディーゼルエンジンの生産ラインからCC-Link IEを使うようになりました。さらに昨年からは、Manesar工場の組み立て工程でもCC-Link IEを導入しております。これらの工場では、CC-Link IEを使って工程間や工程とサーバの間をつなぐネットワークを実現しています。CC-Link IEはスター型やリング型などトポロジの選択肢が多く、フレキシブルなネットワークが構築できるからです。

省エネ化にも貢献するCC-Link
サポート活用し技術者を育成

Sunil一方で自動車に限らず製造業には、省エネルギーに対する取り組みも求められています。特に電力インフラが必ずしも十分ではないインドでは、省エネ対策は大きなテーマです。Maruti Suzuki様では省エネ推進のために、どのような施策を展開されているのでしょうか? Verma氏Maruti Suzukiではクルマの低燃費化だけでなく、工場の省エネをあらゆる方法で推進しています。照明器具を従来型の蛍光灯からLEDに置き換えたり、水処理施設やタービンの冷却水システムなどで使うポンプをエネルギー効率のよいものに置き換えたり、部品や車体を重力に任せて搬送する仕組みをとったり、高圧水で洗い流す工程をエアーウォッシャーに置き換えたりなどすることで、消費エネルギーの低減を進めてきました。
CC-Linkファミリーの採用も、省エネ化に貢献しています。SCADAと電力計をCC-Linkにつなぎ電力消費量を工程ごとに収集し、電力を最適に配分するシステムを構築しています。電力のムダな消費がどれぐらいあるかを明らかにするだけでなく、生産停止中は自動的に電力供給を止めることなども実現しており、省エネを追求するうえでCC-Linkは重要な役割を担っています。
SunilCC-Linkファミリーをいろいろな目的で活用するようになると、それを実際に使いこなす人材の育成も重要になりますね。 Verma氏メンテナンスにあたる技術者の育成では、CC-Link協会が提供しているセミナーや新しいソリューションのデモなどを、有効に活用させていただいております。トラブルを迅速に分析することで設備のダウンタイム低減を進めるうえで、CC-Linkに通じた人材の育成は重要です。CC-Link協会からのサポートはその人材育成に欠かせないものになっています。また三菱電機がGurgaonに用意する研修施設も利用させていただいており、そこでの情報をもとにCC-Link対応リピータを選ぶなど、新しいシステムの開発に役立てています。 Gandhi氏サポートを含め、CC-Linkを推進するCC-Link協会とMaruti Suzukiは、良好なコミュニケーションを構築できていると思っています。インドには現在リコールというポリシーがありませんが、近々政府が法令化すると見られています。法令化されると、自動車メーカーは製造に関わる膨大なトレーサビリティデータを保管しなくてはなりません。他のネットワークにない1Gbpsという広帯域性を持つCC-Link IE Fieldは、大量のデータをネットワークで管理する時代に適しており、今後も更なる採用を検討したいと考えています。 中村CC-LinkファミリーとCC-Link協会の活動が、Maruti Suzuki様の事業の一助となっていることが分かり、私たちも大変光栄です。本日はどうもありがとうございました。

Rajeev Gandhi氏Maruti Suzuki
Executive Director

中村直美CC-Link協会事務局長

Sunil MehtaCLPA India
Chairman

H.Sarkar氏General Manage-Vehicle Engg. Dept.

Virkam Verma氏Vice President

Anoop Chaturvedi氏Vice President

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