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特集:CC-Linkのグローバル展開

CC-Linkのグローバル展開 基盤固めから世界展開に戦略の軸足を移し、日本型ものづくりの拡大を支援するCC-Link

自動車や液晶パネル、半導体などの円滑な生産に欠かせない存在になったCC-Linkが、さらなる世界展開に向けて動き始めた。“世界の工場”となった中国は、簡単な組み立て主体から高度なものづくりへと、産業構造の質が変わりつつある。CC-Linkの普及を促進するCC-Link協会(CLPA)は、中国でのCC-Linkの普及を目指し、「Gateway to China」をキーワードに各種活動を展開している。

日本発の産業用ネットワークであるCCLinkが、
さらなる世界展開を開始した。

CC-Link協会
事務局長
中村直美 氏

CC-Link協会
マーケティング
マネージャー
長島嘉明 氏

地盤を固めたCLPAの10年間

CC-Linkの普及を促進するCC-Link協会(CLPA)は、2000年の設立以来、ものづくり先進国である日本を拠点に、技術の普及と利用実績の蓄積に注力してきた。既に、自動車、液晶パネル、半導体など、複雑で精密な制御が必須な最先端の分野から一般的な製造設備まで、欠かせない技術となっている。

この10年の活動により、対応機器の供給やシステム構築を支援するパートナー企業は、10倍に増加し、世界でもトップ・クラスの1500社以上に達した。また、CCLinkに接続できるセンサーやアクチュエータなどのデバイス機器は、既に約1200種類を数えるまでになった。

さらに、日本と同様の高度なものづくりを行う韓国、台湾などのメーカーにも普及が進んだ。アジア地域でのシェアは約4割を占め、No.1の産業用ネットワークになった。液晶パネル、ガラス、自動車、タイヤなどの分野では、世界に冠たる有力企業が、CC-Linkをベースにしたファクトリ・オートメーション(FA)システムを構築し利用している。

世界展開を加速するフェーズへ

先進ユーザーの下で実績を得たCLPAが次に狙うのは、新興国を含む世界中のものづくりの高度化を支援することだ。2011年4月からは、事務局長に中村直美氏が就任し、世界でのCC-Linkの普及を加速すべく体制を一新した。これによって、日本から世界へと広がる、ものづくりの高度化を強力に後押ししていく。

CLPAによる世界展開の中で、特に注力する地域が中国だ。アジア地域で業界標準の座につくCC-Linkだが、名実ともに“世界の工場”となった中国での普及はこれからだ。現時点で、中国での産業用ネットワークのシェアは、主要3規格が三つ巴の状態である。韓国や台湾と比べて、中国での高度な自動化システムの普及はこれからだからだ。

ただし、現在の中国のものづくりは、簡単な組み立て作業を中心とした産業構造から、精密部品や半導体など部品・材料も自国で生産する裾野が広い産業構造へと急速に変化している。また自動車のように、工程間で生産プロセスを擦り合わせる必要があるような工業製品の生産量も増える。当然、より複雑で精密な制御に対するニーズが中国でも高まる。

こういった高度な生産ラインでは、PLCやアクチュエータなどの間で膨大な量の情報をやり取りし、遅延なく制御する必要がある。Ethernetベースのフィールド・ネットワーク「CC-Link IE Field」は、最大データ伝送速度が競合技術よりも圧倒的に速い1Gbpsで、しかもリアルタイムでの制御が可能である。最先端のものづくりに向けた技術要求に応えることができる唯一の産業ネットワークである。また、リング型、ライン型、スター型といった様々な形状のネットワークの中から最適なものを選択できる配線の柔軟性にも長けている。

CLPAで中国展開を指揮するマーケティングマネージャーの長島嘉明氏は、「中国のものづくりも質的な変化の流れに乗って、ここ数年でシェアを20%以上に広げることが目標」と言う。

中国での本格的な
普及活動を開始

Gateway to China

日本市場でCC-Link対応製品を供給するすべてのメーカーが、中国でも販路を持っていれば、CC-Linkの普及は問題なく進むだろう。しかし実際には、生産ラインの構築には不可欠だが、中国では入手できない製品などもある。不足する製品は、現地メーカーや中国に進出している欧米のメーカーから調達しなければならない。こうした中国でのCC-Link普及の足かせとなっている状況を打開するため、CLPAは「Gatewayto China」を強力に推進する。その名のとおり、中国への橋渡しを行い、海外メーカーの中国でのビジネスを支援する。

現在、CLPAは、韓国、台湾、中国、シンガポール、ドイツ、米国に支部を置いている。各支部では、それぞれの国や地域のサプライヤにCC-Link対応によって生まれる中国でのビジネス・チャンスと、中国市場展開によって得られるベネフィットをPRしている。

さらに、サプライヤに対する支援を強化するために、CLPAは、二方向から施策を打っている。

一つはビジネス・サポートである。CCLink対応の製品を紹介する広告を中国の有力業界誌に掲載したり、セミナーを開催して講演や展示の機会を創出するなどの支援をしている。また、CLPAが発行する機関誌やWEBセミナーも広告活動に利用できる。これらはいずれも無償である。

もう一つは開発サポートである。FA関連機器をCC-Link対応にするためには、機器に通信処理を実行するための半導体チップを搭載してもらわなければならない。CLPAは、半導体チップや配線用ケーブルなどの開発キットを無料で配布している。さらに、キャンペーン対象については、開発した機器の認証テストの費用を協会で負担している。

WEBセミナーの実施

セミナーでのデモ機展示

新しいニーズにも対応

これまで産業用ネットワークは、採用するPLCに合わせて利用するネットワークの規格を決めることが多かった。しかし、ネットワークの性能が生産効率に大きく影響するようになり、ネットワークの規格を先に決めるユーザーも増えてきた。こうした動きに沿って、CC-Linkの技術自体もさらに進化する。

2011年4月には、これまで制御系とは別のネットワークでシステムを構築していた安全系の通信機能をCC-Link IE Fieldに追加した。これによって、制御系と安全系を同じラインで通信できるようになった。

さらに2011年度中には、これまで別のネットワークで制御していたサーボやその他駆動アクチュエーターによって高精度制御を実現していたモーション機能をCCLinkIE Fieldに追加する予定である。これにより、同一ネット上で、コントローラ分散制御、I/O制御、安全通信制御、モーション制御が混在可能となる。

CC-Linkは、高度なFA制御をさらに利用しやすくし、世界中の様々な地域のものづくりを洗練させたものに変えていく。

2011年度中には、インドにも支部を置き、普及活動を開始する予定である。